小児急性骨髄白血病、同定されたNPM1融合遺伝子が白血病誘導能を持つかは不明
東京大学は10月25日、小児急性骨髄性白血病患者で認められたNPM1融合遺伝子(NPM1::MLF1、NPM1::CCDC28)をマウス骨髄細胞に導入して、NPM1転座型白血病のマウスモデルを作製し、NPM1融合遺伝子が白血病誘導能を持つことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻先進分子腫瘍学の合山進教授、下里侑子特任研究員(研究当時)、山本圭太助教、北村俊雄東京大学名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Leukemia」に掲載されている。
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急性骨髄性白血病は、骨髄系の細胞ががん化して異常に増殖する血液のがんである。近年の治療方法の改善により小児急性骨髄性白血病の予後は改善傾向だが、依然として治らないものも多く、新規治療法の開発が望まれている。特に小児の急性骨髄白血病では、融合遺伝子により白血病が誘導される症例が多く、それらの分子機序の解明が、新しい治療法を開発するために必要である。
最近の研究で、NPM1::MLF1、NPM1::CCDC28Aという2つのNPM1融合遺伝子が小児白血病患者で同定された。NPM1の遺伝子異常としては、成人の急性骨髄性白血病で高頻度に認められるエクソン12領域のフレームシフト変異が有名だが、これらのNPM1融合遺伝子が同様の白血病誘導能を持つかどうかは不明だった。
2つの融合遺伝子をマウス骨髄細胞に導入しモデル開発、どちらも急性骨髄性白血病を発症
そこで今回の研究では、小児急性骨髄性白血病で認めた2つのNPM1融合遺伝子の白血病誘導能を検証し、それらが白血病を誘導する分子機序の解明に取り組んだ。
小児急性骨髄性白血病で同定された2つのNPM1融合遺伝子:NPM1::MLF1、NPM1::CCDC28Aを正常マウスから採取した骨髄細胞に導入し、レシピエントマウスに移植した。その結果、どちらの融合遺伝子も急性骨髄性白血病の発症を誘導できること、特にNPM1::CCDC28Aは強い白血病誘導能を持つことが明らかとなった。
NPM1転座型白血病にXPO阻害剤やMenin阻害剤が有効であると判明
また、この白血病細胞を用いてRNA-seq解析やChIP-seq解析を行い、NPM1融合遺伝子導入細胞ではHOX遺伝子群の発現が上昇していること、NPM1融合タンパク質がHOX遺伝子群の転写調節領域に直接結合していることを見出した。さらに、NPM1c異常を有する成人の急性骨髄性白血病に対して有効性が報告されているXPO1阻害剤(Selinexor)やMenin阻害剤(VTP50469)が、NPM1転座型白血病に対しても有効であることを示した。
NPM1転座型白血病に対する治療法開発に貢献すると期待
「本研究で樹立したNPM1転座型白血病マウスモデルは、今後小児急性骨髄性白血病研究を進めるうえで貴重な実験ツールになると考えられる。また本研究成果は、NPM1転座型白血病に対しての治療薬開発に貢献することが期待される」と、研究グループは述べている。
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・東京大学大学院新領域創成科学研究科 記者発表