遺伝子治療製品の開発増、患者は正しく理解しているか
ファイザー株式会社は10月28日、一般人を対象とした遺伝子治療に関する意識調査の結果を発表した。調査は2024年9月13日~18日に、全国の20代以上の一般人(スクリーニング調査1万人、本調査829人、※医薬関連業種や遺伝子治療に関わる患者・家族を除く)対象のインターネット調査として行われた。
画像はリリースより
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遺伝性疾患はDNAの塩基配列が異常を起こすことで引き起こされる疾患で、日本では指定難病とされている338疾患のうち55%を占めている。遺伝性疾患の治療には遺伝子治療が大きな役割を果たすことが期待されており、すでにいくつかの遺伝子治療(製品)が実用化されている。世界では遺伝子治療製品の開発数が増加しており、今後その実用化例は増加していくと考えられている。同社は、遺伝子治療の開発に取り組んでおり、新たにもたらされるイノベーションについて、さまざまな情報が溢れる中、患者の誤解や理解不足が適切な治療選択の妨げになることがないよう、社会全体で正しく理解することが不可欠であると考えている。このような背景から今回、遺伝子治療に対する意識を明らかにするため調査を実施した。
1万人対象のスクリーニング調査、「遺伝子治療という言葉を初めて聞いた」30%
調査の結果、次のようなことがわかった。スクリーニング調査では、「遺伝子治療という言葉をどの程度知っているか」の質問に対し、「説明できるくらい知っている」2.2%、「説明はできないが、知っている」19.6%、「よくわからないが、聞いたことはある」48.2%で、「初めて聞いた」と回答した人は30%だった。
829人対象の本調査、遺伝子治療に対する最も強い印象として「怖い、危険、不安」46%
「遺伝子治療という言葉を聞いたことがある」と回答した人の中で、有効な回答が得られた829人を対象とした本調査において、遺伝子治療の理解度を問う質問で全問正解したのは1.6%。残りの98.4%は間違った選択や「わからない」と回答し、遺伝子治療に対して多くの人に誤解・理解不足があることがわかった。
また、遺伝子治療に対する最も強い印象についての質問に対し、「怖い、危険、不安」とネガティブな印象を回答した人は46%で、「期待している、革新的、他の治療法より優れている」とポジティブな印象を回答した人は51.5%だった。さらに、「過去1年間で遺伝子治療に関する情報を見聞きしたことがあるか」(自分で調べた場合を除いて)という質問に対して、見聞きしていないと回答した人は71.5%だった。同質問で「見聞きしたことのある」人のうち、84.7%はメディアから情報を得ていたことがわかった。
正しい情報を、多角的に発信することが重要
臨床遺伝専門医の山形崇倫氏(栃木県立リハビリテーションセンター理事長兼所長)は、同調査の結果について、次のように述べている。「一般の方々に遺伝子治療という言葉自体がまだ浸透していないことや、遺伝子治療への誤解・理解不足がある実態が明らかとなり、啓発の重要性が示された。遺伝子治療は新しい技術であるため未知の部分もあるが、今まで治療法がなかった患者には希望ともなる画期的な治療法だ。今後実用化例が増加するであろう遺伝子治療が、誤解や理解不足をそのままに治療選択肢から除かれてしまわれないよう、患者のみではなく、社会全体が遺伝子治療とはどういうものなのか、また、その効果と課題を正しく理解することが必要だ。また調査結果で、遺伝子治療へのネガティブな印象を減少させるために効果的なものとして、「報道」「企業や官公庁の情報サイト」「医療従事者」「身近な患者」からの情報が増えることが多く挙げられているように、多角的な情報発信が行われることも重要だ」。
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・ファイザー株式会社 プレスリリース