職場ストレスと体重増加の関連を、阪大職員1万人対象に追跡調査
大阪大学は10月18日、2016〜2021年度にストレスチェックを受けた同大の教職員1万36人を2022年度まで追跡し、ストレスチェックの結果と体重増加の関連を調査した結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の松村雄一朗大学院生(博士課程)と同大キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に掲載されている。
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これまでに、職場における心身のストレスが体重増加のリスクである可能性が示唆されていたが、大規模集団を長期間追跡した研究報告は皆無であり、その関連性は明らかではなかった。
そこで今回研究グループは、2016~2021年度にストレスチェックと職員健診を受けた19~65歳の同大教職員1万36人を2022年度まで追跡し、ストレスチェックの結果と体重増加の関連を評価した。
「不安」「眠れない」など心身のストレス反応高い教職員、10%以上の体重増リスクが高い
研究の結果、ストレスチェックの3領域(仕事のストレス要因(A項目17問)、心身のストレス反応(B項目29問)、周囲のサポート(C項目9問))のうち、心身のストレス反応が高い教職員は10%以上の体重増加のリスクが高いことが明らかになった。ここでの「心身のストレス反応」とは、「不安だ」「ゆううつだ」「動悸や息切れがする」「眠れない」といった状況を指す。
心身のストレス反応の点数に基づいて、下位から0~49%、50~74%、75~89%、90~100%の4群(Q0-49、Q50-74、Q75-89、Q90-100)に分類し、10%以上の体重増加リスクを算出した。心身のストレス反応が最も低い教職員(Q0-49)に比較して、Q50-74、Q75-89、Q90-100の教職員の体重増加リスクは、1.0倍(95%信頼区間0.8–1.2)、1.3倍(1.0–1.6)、1.4倍(1.1–1.8)であり、Q75-89およびQ90-100の教職員の体重増加リスクが上昇していた。一方、仕事のストレス要因と周囲のサポートは体重増加のリスクではなかった。
職場環境への介入で職場のストレスを低下させ、健康リスク低減達成に期待
今回の研究成果は、職場での心身のストレス反応が高い人は体重増加のリスクが高いことを示している。肥満は、第3次健康日本21で対策が必要とされている非感染性疾患(NCDs:Non-Communicable Diseases)の重要な原因の一つである。国民一人一人の健康を維持するためには、肥満防止対策は根幹をなす施策だと言える。職場の心身のストレスが肥満のリスクであるという啓発を通じて、職場環境への介入により職場のストレスを低下させ、従業員の方々の健康リスク低減が達成されることが期待される、と研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU