低酸素環境下で損傷受けやすい海馬、胎児期における低酸素の影響は不明だった
東京医科大学は10月21日、母胎内低酸素環境が新生仔マウスの海馬形成に及ぼす影響を解明したと発表した。この研究は、同大組織・神経解剖学分野(髙橋宗春主任教授)の大山恭司准教授、社会人大学院生の大村捷一郎氏(精神医学分野専攻医)、医学科第4学年の小川莉奈氏、医学科第6学年の嘉和知朋美氏、篠原広志講師、大阪大学の前田秀将准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Cellular Neuroscience」に掲載されている。
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学習・記憶を司る海馬は、低酸素環境下で損傷を受けやすい脳部位として知られている。しかし、出生前に低酸素環境に曝露されたマウス海馬にどのような組織学的変化が起きるかは明らかではなかった。
妊娠時睡眠時無呼吸症候群マウス、仔のオリゴデンドロサイト前駆細胞の比率低下
今回、研究グループは、妊娠時睡眠時無呼吸症候群モデルマウスから生まれた仔マウスを解析。その結果、低酸素環境下への適応として、研究グループが独自に発見した新規アストロサイト前駆細胞(Olig2+/NG2+/BLBP+ ASPs)が増生し、それらの血管カップリングが増進する(血管とのつながりが強化される)ことが判明した。その一方で、上記アストロサイト前駆細胞に対するオリゴデンドロサイト前駆細胞の比率が低下することを見出した。アストロサイト/オリゴデンドロサイト比率のアンバランスは白質損傷との関連性が示唆されている。今後、低酸素環境が白質の形成に及ぼす影響を明らかにする必要がある。
発達障害の早期発見や効果的な介入方法の開発につながると期待
今回の研究成果は、母胎環境が新生児の学習能力や記憶力の発達にどう影響するか、海馬も含め脳がどのように環境変化に適応して自己を守るかを明らかにするための手がかりとなる。「将来的には、発達障害の早期発見や効果的な介入方法を開発することが期待される」と、研究グループは述べている。
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