日本では2型糖尿病治療薬として、米国などでは肥満症治療薬として発売
日本イーライリリー株式会社は10月22日、肥満症のある日本人に対し、チルゼパチドの週1回投与による有効性と安全性が検討された「SURMOUNT-J試験」において、チルゼパチド10mg/15mg群のプラセボ群に対する統計学的に有意な体重減少効果が示されたことを発表した。今回の結果は、2024年10月に横浜で開催された「第45回日本肥満学会学術集会」で発表された。
チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。日本において、2023年4月に2型糖尿病治療薬「マンジャロ(R)」として発売され、2.5mg~15mgまでの6規格を販売しており、すでに臨床において多くの2型糖尿病のある人々に使用されている。また、同社は2024年5月までに規制当局に対し、肥満症に対する治療薬としてチルゼパチドの承認申請を行った。世界においては、米国およびその他数か国において肥満症治療薬として承認されており、米国ではZepbound(TM)の製品名で発売されている。
SURMOUNT-J試験は、肥満または高度肥満、かつ肥満に関連する健康障害を有する日本人の成人を対象に実施された、第3相多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験。主要評価項目として、ベースラインから72週時の体重の平均変化率、および5%以上の体重減少を達成した試験参加者の割合が評価された。試験参加者は、それぞれプラセボ群、チルゼパチド10mg群、チルゼパチド15mg群の3群に割り付けられ、4週間のスクリーニング期間を経た後、用量漸増期間として1回2.5mg週1回皮下投与から開始、4週ごとに投与量を2.5mgずつ増量した。それぞれの投与群が規定用量(チルゼパチド10mgまたは15mg)にまで達した時点で投与量を固定し、その後72週の試験終了時点まで投与を継続した。
両用量群とも、プラセボ群に対し評価項目で優越性示す
72週時の体重のベースラインからの平均変化率は、プラセボ群(n=75)1.7%減に対して、チルゼパチド10mg群(n=71)17.8%減、チルゼパチド15mg群(n=76)22.7%減と、チルゼパチド両群でプラセボ群に対する優越性が示された。また、「5%以上の体重減少を達成した試験参加者の割合」は、プラセボ群の20.0%に対してチルゼパチド10mg群94.4%、チルゼパチド15mg群96.1%と、両群ともにプラセボ群に対する優越性を示した。さらに、副次評価項目として、72週時の体重がベースラインから7%以上減、10%以上減、15%以上減、20%以上減と、それぞれの達成率を比較したところ、いずれの評価項目においてもチルゼパチド両群で、プラセボ群に対する優越性が示された。
有害事象はプラセボより「高」、便秘、悪心、下痢など
同試験では、72週時に肥満に関連する健康障害の改善が認められた参加者の割合についても検討された。耐糖能異常、脂質異常症、および非アルコール性脂肪性肝疾患のうち2つ以上の健康障害が0または1になった参加者(高度肥満の場合は1つ以上の健康障害が0になった参加者)の割合は、プラセボ群11.1%に対してチルゼパチド10mg群70.0%、チルゼパチド15mg群79.7%という結果が示されました。また、それぞれの改善度を見ると、耐糖能異常はプラセボ群28.0%に対して、チルゼパチド10mg群 92.5%、チルゼパチド15mg群 97.8%だった。脂質異常症はプラセボ群 25.0%に対して、チルゼパチド10mg群 72.4%、チルゼパチド15mg群 81.1%だった。非アルコール性脂肪性肝疾患はプラセボ群 9.8%に対して、チルゼパチド10mg群 69.5%、チルゼパチド15mg群 77.4%だった。
試験中に確認された全ての有害事象の割合は、プラセボ群(n=75)69.3%に対し、チルゼパチド10mg群(n=73)83.6%、チルゼパチド15mg群(n=77)85.7%だった。そのうち重篤な有害事象は、プラセボ群6.7%、チルゼパチド群10mg群11.0%、チルゼパチド15mg群6.5%に認められた。試験期間中にチルゼパチド群で5%以上に認められた有害事象は、COVID-19、便秘、発熱、悪心、下痢、嘔吐、食欲減退、上咽頭炎、背部痛、腹部不快感、頭痛、免疫反応、注射部位反応、関節痛だった。プラセボ群と比較すると、特に胃腸障害関連事象(便秘、悪心、下痢など)の発現割合が高く認められた。
肥満関連疾患の発症・悪化リスクを軽減の可能性
同研究を主導した、国家公務員共済組合連合会 虎の門病院院長の門脇孝先生は「チルゼパチドが、肥満に起因ないし関連する健康障害や慢性疾患の、発症や悪化のリスクを軽減する可能性が示されたことは、肥満症のある人にとって大変意義深いことだ」と、述べている。
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・日本イーライリリー プレスリリース