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CADASIL、変異タンパク質の糖鎖修飾による蓄積機構を解明-千葉大ほか

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2024年10月24日 AM09:30

遺伝性脳小血管病CADASILの原因となるNOTCH3変異型、発症機構の詳細は未解明

千葉大学は10月17日、遺伝性脳小血管病CADASILの原因として知られるNOTCH3変異型タンパク質の蓄積に、糖鎖修飾酵素Radical fringe(RFNG)が寄与することを世界に先駆けて発見したと発表した。この研究は、同大大学院薬学研究院の伊藤素行教授、鈴木翔大日本学術振興会特別研究員PD(受入機関:)、静岡県立大学大学院薬学研究院の竹内英之教授、名古屋大学糖鎖生命コア研究所の塚本庸平日本学術振興会特別研究員PD(受入機関:)、岡島徹也教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Biological Chemistry」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

認知症の病態進行には老化などの環境要因に加え、遺伝的な要因も影響する。国内で、遺伝性の脳卒中によって引き起こされる認知症の半分以上は、CADASILである。CADASILは、患者数が人口10万人あたり数人の希少難病として知られていたが、最近の研究では、アジア圏でおよそ100人に1人がCADASILもしくはその予備軍と推定されている。CADASILは無症状期間を経た後、老化が遺伝要因と組み合わさることで発症する。しかし、病態の仕組みはまだ完全には解明されておらず、根本的な治療法も存在しない。

CADASILで障害されるのは、脳の小さな血管である。小さな血管は「」と呼ばれる細胞によって血流が調節されている。ペリサイトの生存を促す主なタンパク質は、NOTCH3タンパク質だが、このタンパク質を作る遺伝子に変異が生じて、「 CADASIL変異型タンパク質」が作られることがある。これはペリサイトが生存し続け、血流が適切に調節されるためのシグナルである「Notchシグナル」を弱めるだけでなく、血管の周囲に異常に蓄積することで毒性が発揮され、老化と結びつくことでCADASILを発症すると考えられている。しかし、 CADASIL変異型タンパク質が老化と結びつくことで、どのようにして機能が低下し、タンパク質の蓄積が増加するのか、その詳しい機構は不明だった。

NOTCH3タンパク質は遺伝子に含まれる情報だけでなく、化学修飾の1つである糖鎖修飾を通じて、そのシグナル活性やタンパク質の量が制御されている。研究グループは、老化によってNOTCH3 CADASIL変異型タンパク質の糖鎖修飾が増えることで、Notchシグナルの低下とNOTCH3タンパク質の蓄積が起こると予想した。そこで、CADASILで見られるNOTCH3遺伝子上に起こる変異の1つであるC185R、R141C変異に着目して、糖鎖修飾の影響を検証した。

RFNGが増え糖鎖修飾促進、C185R・R141C変異型のシグナル活性を弱め蓄積させる

実験の結果、1)ペリサイトの老化によってRFNGの発現が上昇する、2)RFNGは糖鎖修飾を促進する、3)NOTCH3 R141CとC185R変異型は正常なものに比べて、RFNGによって蓄積しやすい、4)シグナル活性がRFNGによって著しく減弱する、という4つのメカニズムが明らかになった。

これらの結果から、RFNGが老化によって増えることで糖鎖修飾を促進し、NOTCH3 CADASIL変異型タンパク質であるC185RとR141C変異型がシグナル活性を弱め、さらに蓄積することで、血流が低下して脳梗塞や認知症を引き起こすという、糖鎖修飾を介した新たなCADASIL病態の機構が考えられた。

NOTCH3糖鎖修飾介した病態解明や治療法確立につながることを期待

CADASILの原因となるNOTCH3遺伝子変異は、R141CやC185R以外にも多くの種類が報告されている。今後、他の変異型のタンパク質蓄積に対してもRFNGが関与するのかを調べる必要がある。また、動物モデルなどを用いて、RFNGが脳梗塞や認知症といった病態形成を促すのか検討する必要がある。「CADASILの根本的な治療法はいまだ確立されていないが、今回の研究を発端として、NOTCH3の糖鎖修飾を介した病態の解明や有効な治療法の確立が進むことが期待される」と、研究グループは述べている。

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