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半年以内に歯科を受診した高齢者の介護費用は、未受診者より低い-東北大

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2024年10月21日 AM09:10

口腔状態悪化は要介護リスク上昇、歯科受診は介護費用の抑制につながるか

東北大学は10月11日、日本の自立した高齢者8,429人を対象に、過去6か月以内の歯科受診の有無とその後8年間の累積介護費用が関連しているかどうかについて検討し、過去6か月以内に歯科受診を行った人は、未受診者と比較し、その後8年間の累積介護費用が低いことがわかったと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科の竹内研時准教授、同大学際科学フロンティア研究所の木内桜助教らの研究グループによるもの。研究成果は「The Journal of Gerontology : Series A」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

超高齢社会を迎えた日本において、介護費用は増加の一途をたどり、2019年には11.7兆円に達した。介護保険制度の維持のためには、効率的な費用削減が望まれる。先行研究において、口腔状態の悪化が要介護状態になるリスクの上昇と関わることが示されていた。歯科受診は口腔衛生や口腔の健康状態を維持する上で重要な役割を果たしており、歯科受診を通じて口腔状態を健全に保つことが、間接的に要介護状態の発生を予防し、その結果として介護費用の抑制につながる可能性がある。そこで研究グループは、過去6か月以内の歯科受診の有無が、その後8年間の累積介護費用と関連しているかどうかを検討した。

65歳以上の8,429人を8年間追跡

(JAGES)の調査に回答した、2010年時点で65歳以上の自立した高齢者を対象に、8年間の追跡調査を行った。過去6か月以内の予防目的の歯科受診、治療目的の歯科受診、予防または治療目的の歯科受診の3項目を調査し、その後8年間の累積介護費用との関連を調べた。分析に際しては、性別、年齢、歯の本数、婚姻状況、BMI、教育歴、所得、歩行時間、飲酒の有無、喫煙の有無、うつ、高血圧、糖尿病、がん、脳卒中、心臓病、健康診断の受診歴、地域変数の影響を除外した。統計解析では、歯科受診の項目ごとの累積介護費用の予測値を推定した。8,429人が解析に含まれ、平均年齢は73.7歳、男性が46.1%だった。追跡期間中、17.6%が介護サービスの利用を開始しており、平均累積介護費用は48万7,704円だった。

予防目的での歯科受診者、未受診者に比べ、累積介護費用が約11万円低い

分析の結果、過去6か月以内に歯科受診を行った人では、その後8年間の累積介護費用の予測値が低いことがわかった。累積介護費用の予測値は、「予防目的の歯科受診」を行った人では行わなかった人と比べて10万8,990円低く(95%信頼区間=-18万8,850~-2万9,120)、「治療目的の受診」を行った人では行わなかった人と比べて8万670円低く(95%信頼区間=-16万4,740~3,400)、「予防または治療目的の歯科受診」を行った人では行わなかった人と比べて9万8,060円低い(95%信頼区間=-18万3,570~-1万2,550)という結果だった。

過去6か月以内に歯科受診を行ったこと、特に予防目的で歯科受診を行ったことは、その後8年間の累積介護費用が低いことと関連していた。この結果から、歯科受診を通じて口腔の健康を維持することで、介護費用を抑えられる可能性が示唆された。「今後の研究では、歯科の処置内容などを含めた解析を行うことで、どのような治療や予防行為が介護費用の削減に寄与するのかについて、さらに検討することが求められる」と、研究グループは述べている。

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