協和キリンは、急性骨髄性白血病(AML)を対象に、抗体薬物複合体(ADC)「KK2845」の第I相試験を年内にも開始する。AMLは再発率が高く、再発の一因は白血病の起源となる白血病幹細胞が骨髄内に残存するためと言われていることから、白血病幹細胞に発現し、発症や増殖に関与していると見られるTIM-3分子を標的に、再発を抑える再発・難治AML治療薬を目指す。
TIM-3分子は、九州大学と行った新規治療標的分子探索により同定したもので、正常な血液幹細胞には発現していないが、白血病幹細胞に多く発現しており、特異性が高い。
そこで同社は、抗体と細胞増殖を抑える作用を持つPBD(ピロロベンゾジアゼピン)を結合させた「KK2845」を、治療上の課題となる骨髄抑制を回避しながら、白血病幹細胞の機能を抑え、再発を抑制する薬剤として開発することにした。
非臨床試験では、AML細胞に対しては細胞数を減らす一方、正常造血幹細胞に対しては減らすことなく、同剤の安全性が示唆される結果を得た。
マウスに対する抗腫瘍活性も、コントロールADCに比べ高い抗腫瘍効果が示された。
これらの結果から臨床開発段階に入ることになった。再発・難治AML患者は日米欧で2万人あまりと推定され、同社は新たな治療選択肢としてグローバル開発を進める方針だ。
同社のADCは、得意とする抗体技術と、ライセンス契約を締結しているオランダのシナフィックスの独自のADC創設技術により実現したもので「KK2845」は、同社によるADCの臨床開発第1号になる。
同剤以外に難治性血液疾患治療薬候補として三つのADCが非臨床段階にあり、その一つは2025年中の臨床開発入りを目指す。同社は、ADCパイプラインを構築したい考え。