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間質性膀胱炎(ハンナ型)、B細胞異常発生メカニズムを解明-信州大ほか

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2024年10月18日 AM09:30

、詳細な発症メカニズムは不明

信州大学は10月9日、間質性膀胱炎(ハンナ型)に関するB細胞抗原受容体免疫ゲノム解析を行い、膀胱組織へ浸潤しているB細胞のクローン性拡大が起きていることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大学術研究院医学系泌尿器科学教室・同医学部附属病院・泌尿器科の秋山佳之教授、金沢大学医薬保健研究域医学系・分子細胞病理学の前田大地教授、堀江真史准教授、・男性科の久米春喜教授、田口慧講師、秋田大学大学院医学系研究科・器官病態学の後藤明輝教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Pathology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

間質性膀胱炎(ハンナ型)は、慢性的な炎症と膀胱粘膜のびらんにより激しい膀胱・尿道痛、頻尿、尿意切迫感などの排尿症状を引き起こし、患者の生活の質(Quality of Life)を大きく損なう。同疾患は国の指定難病であり、病態機序はほとんど解明されておらず、標準的な診断基準や根治治療は確立されていない。

研究グループはこれまでに、間質性膀胱炎(ハンナ型)の病理組織学的特徴として、B細胞異常、膀胱上皮粘膜の剥離を明らかにしており、形質細胞の浸潤が同疾患の特徴であることを突き止めてきた。しかし、より詳細な発症メカニズムは不明だった。

日本人検体で包括的な免疫ゲノム解析

今回、研究グループは日本人の間質性膀胱炎(ハンナ型)患者の検体を用いて包括的な免疫ゲノム解析を行った。まず多重免疫染色のイメージングマスサイトメトリーを行い、形質細胞が上皮下へ浸潤していることを確認。さらに37例のRNAシークエンスから約4割の症例において軽鎖制限(κ鎖16%、λ鎖22%)が起きていることを突き止めた。

浸潤B細胞クローン性拡大を同定、APRILとBAFFが寄与の可能性

そこでB細胞抗原受容体(BCR)のゲノムシークエンスによるBCRレパトア解析(B細胞抗原受容体免疫ゲノム解析)を行ったところ、浸潤B細胞のクローン性拡大が起きていることがわかった。さらにRNAシークエンスによる遺伝子発現プロファイルと統合することで、2種類のタンパク質APRIL(遺伝子名:TNFSF13)とBAFF(遺伝子名:TNFSF13B)がB細胞のクローンの多様性と強く逆相関しており、これらの分子がクローン拡大に寄与している可能性を明らかにした。

APRIL・BAFFに制御される病態の全貌を明らかに

次に、膀胱全摘出例を対象に20か所のマルチプルサンプリングを行い、同一症例の過去の生検検体と合わせてBCRレパトア解析による時・空間的なクローンの広がりと拡大を評価。その結果、一部の領域では生検時と同じクローンが拡大している一方で、別の箇所では全く異なるクローンが出現・拡大していた。最後にこれらのクローンの広がりとAPRIL・BAFFなどの遺伝子発現、そして病理学的特徴のパラメータを抽出・統合し、クラスタリング解析を行ったところ、3群のパターンに分類され、APRIL・BAFFに制御される間質性膀胱炎(ハンナ型)の病態の全貌を明らかにした。

APRILやBAFFに注目した新規治療法開発などに期待

今回の研究では、免疫ゲノム解析を応用することでB細胞異常と膀胱上皮粘膜の剥離がBAFF/APRIL系の生物学的経路によって制御されていることを突き止めた。間質性膀胱炎(ハンナ型)の成因となる免疫ゲノム異常が明らかとなったことにより、その病態の理解が大きく進むことが期待される。また、将来的には、APRILやBAFFといった分子に注目した、新規診断方法や疾患バイオマーカー、新規治療の開発につながることも期待される、と研究グループは述べている。

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