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妊婦の尿中DEP濃度と血中LDLコレステロールの関連調査-環境研ほか

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2024年10月08日 AM09:30

妊娠中の有機リン系殺虫剤のばく露、血中LDLコレステロールへの影響は不明

国立環境研究所は10月1日、妊婦の妊娠初期の尿中有機リン系殺虫剤代謝物(DAP)濃度と血中LDLコレステロールの関連について、エコチル調査の約5,000人のデータを解析したと発表した。この研究は、同研究所エコチル調査コアセンターの中山次長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Environment International」に掲載されている。

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、エコチル調査)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査だ。さい帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

心血管疾患は全世界で死因の第一位を占める重要な健康問題だ。心血管疾患のリスクを高めるものとして、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙等がある。脂質異常症は、血中のLDLコレステロールが高いことがリスクとして報告されている。LDLコレステロールを下げる方法として、食事療法、減量、薬物治療等がある。一般的に妊娠中は血中のコレステロール濃度が妊娠前より高くなることが知られている。妊娠中の血中LDLコレステロール高値は子どもの血中LDLコレステロール高値と関連することが報告されており、子どもの将来の心血管疾患のリスクを高める可能性がある。

一般人や農業従事者を対象とした研究では、一般人の殺虫剤や除草剤へのばく露、農業従事者の有機リン系殺虫剤へのばく露は血中LDLコレステロール上昇と関連することが報告されている。しかし、妊婦における有機リン系殺虫剤のばく露と血中LDLコレステロールの関連については明らかになっていない。そこで今回の研究では、妊娠初期の尿中有機リン系殺虫剤代謝物(DAP)濃度と血中コレステロール濃度の関連性を検証した。

妊婦5,000人の尿中DAP濃度とコレステロール値の関連調査、エコチル調査より

今回の研究では、エコチル調査に参加する約10万組の親子のうち、妊娠初期の尿中DAP濃度が測定されている5,169人の妊婦(内1,095人が肥満)のデータを使用した。尿中DAPには6種類あり(DMP、DEP、DMTP、DETP、DMDTP、DEDTP)、その内50%以上の妊婦で報告限界値を超えるレベルで検出された3種類のDAP(DMP、DEP、DMTP)を解析対象とした。これら3種類の尿中DAP濃度と、妊娠初期の血液検査で測定した総コレステロール、、HDLコレステロール、中性脂肪の関連性をベイズ線形回帰分析で調べた。加えて、LDLコレステロールが145 mg/dL以上であった群を高LDLコレステロール群とし、尿中DAP濃度と高LDLコレステロールの有無の関連性をベイズロジスティック回帰分析で検討を行った。また、これらの解析を肥満、標準体重、低体重の3つのグループに分けて行った。

肥満の妊婦では、尿中DEP濃度と血中LDLコレステロール濃度が関連

検討の結果、肥満の妊婦において尿中DEP濃度と血中LDLコレステロール濃度の関連を認めた。尿中DEP濃度が高い程、高LDLコレステロールとなるオッズ比が上昇した。

標準体重・低体重の妊婦では関連なし、今後さらなる研究が必要

尿中DMP濃度や尿中DMTP濃度、および標準体重や低体重のグループでは同様の関連は見られなかった。

今回の研究では、肥満の妊婦において尿中DAPの一種の尿中DEP濃度高値と血中LDLコレステロール高値との関連を認めた。しかし、有機リン系殺虫剤のばく露が実際に血中LDLコレステロールを上昇させるかについては、今後さらなる研究が必要だ、と研究グループは述べている。

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