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2型糖尿病の低用量アスピリン副作用、投与開始3年以降リスク低下-兵庫医大ほか

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2024年10月04日 AM09:20

低用量アスピリン、消化管出血などの発生率・時期の臨床疫学が求められる

兵庫医科大学は9月30日、2型糖尿病患者の心血管イベント一次予防に投与される低用量アスピリンについて、消化器症状などの副作用の発生率の長期的な影響を分析し、投与開始から3年を経過するとそのリスクが低下することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部6年生の桝谷直子氏、社会医学データサイエンス部門の森本剛主任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「American Journal of Cardiovascular Drugs」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

低用量アスピリンは心血管イベントハイリスク患者に対して、一次予防、二次予防として広く利用されている。特に、糖尿病患者は心血管イベントのハイリスクであり、米国では60歳以上の糖尿病患者の62%が低用量アスピリンを服用している。一方で、低用量アスピリンの副作用である出血リスクのある患者に対しては、低用量アスピリンの一次予防は推奨されておらず、特に消化管出血やその前段階である消化器症状の発生率や発生時期についての臨床疫学が求められている。

ランダム化臨床試験データで、2型糖尿病患者の低用量アスピリンによる上部消化管症状・出血の発生率を検討

ランダム化臨床試験およびフォローアップ研究の事後解析を行い、2型糖尿病患者における低用量アスピリンの心血管イベント一次予防を評価したランダム化臨床試験Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis with Aspirin for Diabetes(JPAD)Trialに登録された患者2,535人(アスピリン群1,258人、非アスピリン群1,277人)について、2002年12月の登録開始から最終フォローの2021年7月まで最長19年間の観察を行い、上部消化管症状(上腹部痛、悪心、嘔吐、食欲不振など)と上部消化管出血からなる複合エンドポイント(上部消化管イベント)および出血を除く上部消化管症状、上部消化管出血、全ての出血性イベントを評価した。

各イベントの累積発生率を比較し、アスピリン群について、緩衝錠群951人と腸溶錠群208人に分けた解析も行った。観察期間をランダム化後3年以内と3年以降で分けて、ランドマーク解析を行い、各イベントの累積発生率およびCox比例ハザードモデルを用いたハザード比(HR)および95%信頼区間(95%CI)を推定した。登録時の平均年齢は65歳であり、男性は55%、糖尿病罹病期間の中央値は7年の患者において、18年時点における上部消化管イベントの累積発生率はアスピリン群8.8%に対して非アスピリン群5.7%だった。

消化器症状などの副作用、投与開始後3年経過でリスク低下

3年時点におけるランドマーク解析の結果、3年以内におけるアスピリン群のHRは7.1(95%CI 3.2-15.7)であったのに対して、3年以降では1.20(95%CI 0.76-1.89)と3年を境に、その影響は大きく減弱していた。出血を除く上部消化管症状についても、3年以内におけるアスピリン群のHRは11.4(95%CI 4.09-31.7)だったのに対して、3年以降では1.14(95%CI 0.62-2.1)だった。上部消化管出血および全ての出血性イベントに関しては、イベント発生率が低く、有意差は認められなかった。

アスピリン群において、緩衝錠群と腸溶錠群を比較したところ、上部消化管イベントに対する腸溶錠群の補正後HRは3年以内で0.39(95%CI 0.21-0.73)と緩衝錠群よりも発生リスクが有意に低いことが明らかとなった。

他の長期予防医療も、同様の長期観察が必要

ランダム化臨床試験を、試験終了後も長期にフォローすることで、当所想定してなかった新しい知見が得られることとなった。臨床試験の終了後であり、元々のランダム化からは異なる治療となっている可能性はあるが、割り付け治療を変更した患者は全体の15%であり、今回の結果は、これか低用量アスピリンの服用を始めようとする患者のみならず、現在服用中の患者がこれからどうするか、という判断に役に立つと考えられる。従来のリスク因子分析やガイドラインにおいては、治療を始めるときのリスクを勘案して治療選択を行うことが一般的であるが、このように長期的な観察を行うことで、コホートやリスクが変わる可能性があることが示されたことから、長期的な管理が必要な他の予防医療についても同様の長期観察が求められる、と研究グループは述べている。

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