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リモート労働者、多要素プログラムで身体活動促進-筑波大ほか

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2024年09月25日 AM09:10

出社労働者より身体活動「少」座位時間「長」、健康リスクが高い

筑波大学は9月17日、リモート労働者を対象に、身体活動を促進する多要素プログラムを提供し、その効果を調べた結果、対照群との差は見られないものの、身体活動量が有意に増加し、プログラムの実行可能性が示されたと発表した。この研究は、同大体育系の中田由夫教授、MS&ADインターリスク総研株式会社の森本真弘リスクコンサルティング本部企画室部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Occupational Health」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

新型コロナウイルス感染症は、社会に大きな変化を招いた。その一つとして、リモート勤務が普及したことで、オフィス労働者(デスクワーク従事者)の身体活動に悪影響を与えた。先行研究によると、リモート労働者は出社労働者と比べて、身体活動が少なく、座位時間が長く、健康リスクが高まっている状態だ。新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した後の2024年3月の東京都の報告においても、都内企業の44%がリモート勤務を実施しており、このような勤務形態が定着していると見られる。しかし、リモート労働者に対する身体活動促進対策は十分ではない。

多要素身体活動促進プログラムのパイロットRCT、2022年1月~3月実施

同研究グループはこれまでに、多要素身体活動促進プログラムを開発。リモート勤務と出社勤務の両方を実施しているオフィス労働者に対して、単群介入試験として提供した対象者の中高強度身体活動時間(MVPA)が7.3分/日増加し、リモート勤務日に限っても、7.1分/日増加したことを確認している。

そこで、今回の研究では、このプログラムが、完全なリモート労働者においても同等な効果が得られるという仮説に基づき、その効果を対照群と比較するパイロットランダム化比較試験を実施した。研究対象者(平均年齢38.1歳、女性割合37%)は、東京にあるIT企業で勤務するリモート労働者52人で、社内での広報を通じて募集された。新型コロナウイルス感染症の流行期間中(2022年1月~3月まで)に、介入群の研究対象者には、8週間の多要素身体活動促進プログラムとして、身体活動を促進するための個人戦略(講義、印刷物、目標設定、フィードバック、ポスター)、社会文化的環境戦略(チーム構築、雰囲気づくり)、組織的戦略(役員によるメッセージ)を提供した。一方、対照群には、最小限の介入としてポスターを提供した。なお、研究対象者に対する説明会、アンケート調査、介入プログラム提供は、研究参加企業の担当者と十分に協議した上で、すべてリモートで実施された。

本研究での主要評価項目は、活動量計により評価したMVPA。副次評価項目は歩数、低強度身体活動時間(LPA)、中強度身体活動時間(MPA)、高強度身体活動時間(VPA)、座位行動時間(ST)。また、研究対象者の日常生活を勤務日、休日に分けた分析も行い、勤務日と休日での身体活動量の変化を明らかにした。

勤務日の中高強度身体活動時間など有意に増加

分析の結果、8週間の多要素身体活動促進プログラムを通して、介入群と対照群の身体活動量の変化に、有意差は認められなかった。各群内の身体活動の変化について、介入群でLPAが14 分/日(95%信頼区間1.7-26.8分)増加した。また、勤務日でのMVPAが9.4分/日(2.5-14.6 分)、MPAが8.1分/日(1.6-14.6分)、歩数が984歩/日(195-1774歩)、それぞれ有意に増加した。

一方、ポスターのみを提供した対照群でも、勤務日の歩数が895歩/日(229-1561歩)有意に増加した。対照群でも歩数が増加していたことから、介入内容が対照群にも知られたことが疑われるとしているが、同研究で提供した多要素身体活動促進プログラムは、リモート労働者においても実行可能であることが示唆された。

今後、介入方法や研究デザインを再検討

同研究により、リモート労働者に対する身体活動介入の実行可能性が確認された。一方、対照群との明確な差は認められなかったことから、今後、介入方法や研究デザインを再検討し、日本におけるリモート労働者の身体活動を促進するための対策づくりに役立つ知見の創出に取り組む、と研究グループは述べている。

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