「声の変化」からCOPD増悪を予測
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪を、患者の声の変化から予測できることを示した新たな研究結果が報告された。患者の声は、増悪が始まる直前には高くなり、増悪が始まるとかすれることが判明したという。この研究を実施したマーストリヒト大学医療センター呼吸器内科学(オランダ)のLoes van Bemmel氏らは、これらのサインを使ってCOPDの増悪に備えられるようにするためのスマートフォン(以下、スマホ)のアプリの開発に取り組んでいる。この研究結果は、欧州呼吸器学会(ERS Congress 2024、9月7~11日、オーストリア・ウィーン)で発表された。
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Van Bemmel氏は、「アプリの開発に成功すれば、家庭でCOPDの増悪を早期に検知し、診断につなげられる可能性がある。そうすれば、患者自身が自宅で増悪を管理できるようになるだろう」と言う。
COPDは肺気腫や慢性気管支炎を含む呼吸器疾患の総称で、肺への気流が妨げられるため呼吸しにくくなる。COPDの増悪が始まった場合には、早期段階で治療しない限り、入院や死亡リスクの上昇につながり得るという。
今回の研究でvan Bemmel氏らは、28人のCOPD患者に12週間にわたって毎日、スマホのアプリで自分の音声を録音してもらった。患者は、まず、息が続く限り「あー」と声を出し続けたときの音声を録音し、その後、物語の中の短い文章を読むか、質問に回答したときの音声の録音も行った。また、研究参加者は、COPDの症状に関する質問票に毎日回答した。
最終的に11人が毎日の音声の録音を完了し、総計1,691件の音声データが収集された。このデータを分析して音声の変化とCOPDの増悪との関係を調べた。その結果、増悪が始まる直前には患者の声が高くなることが明らかになった。また、増悪が始まった際には、声帯の振動の乱れの指標である「ジッター(jitter)」が高くなり、声の安定性が低下してかすれ声になることも明らかになった。
Van Bemmel氏は、「録音された患者の音声は、平常時と増悪の初日の間で明らかな違いがあった。これによって、増悪のごく初期でも音声が大きく変化するというわれわれの仮説が裏付けられた」と話す。
この結果は、より多くのCOPD患者を対象とした研究で確認する必要があるが、van Bemmel氏らはすでに患者の呼吸器疾患の管理の向上に役立つアプリに今回得られた知見を取り入れる計画を立てている。同氏は、「病気によって違いはあるが、音声の分析は、他の呼吸器疾患にも有用な可能性はある。われわれは、多くの呼吸器疾患に音声バイオマーカーが存在するのではないかと見ている」と言う。
研究グループの一員である、マーストリヒト大学医療センター呼吸器内科学部長でERS年次学術集会事務局のFrits Franssen氏は、COPDの増悪に早期の段階で気付くことの重要性を指摘し、「症状が増悪すると、長期にわたる健康状態の悪化につながり、命に関わることさえある。症状の増悪に早期の段階で気付いて治療すれば、重篤な合併症を回避できる場合が多い」とERSのニュースリリースで説明している。
さらにFranssen氏は、「今後、この結果が検証されれば、治療の必要性を患者とその担当医に警告する、迅速かつ効率的なシステムが構築される可能性がある。このようなスマホを介した音声分析は、時や場所を問わず誰でも利用でき、最終的には費用や時間の節約と患者の救命につながる可能性がある」と述べている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
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