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色素剤を用いた潰瘍性大腸炎と過敏性腸症候群の評価法を開発-兵庫医科大ほか

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2024年09月20日 AM09:00

既存の「粘膜透過性評価法」には、被験者の負担が大きいという問題があった

兵庫医科大学は9月13日、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を活用し、色素剤インジゴカルミンの血中濃度から、潰瘍性大腸炎や過敏性腸疾患症候群の病態の指標である腸管粘膜透過性を評価する手法を開発したと発表した。この研究は、同大消化器内科学の福井広一教授らの研究グループと株式会社島津製作所との共同研究によるもの。研究成果は、第49回医用マススペクトル学会(9月13~14日に島津製作所本社で開催)で発表された。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

潰瘍性大腸炎の国内患者数は約20万人、過敏性腸疾患症候群の国内潜在患者数は人口の約10%の1200万人と言われている。症状が重くなると腹痛や頻便により日常生活に支障をきたす。原因は明確ではなく、腸バリア機能障害による腸管粘膜透過性の高まりで生じる「腸もれ()」が一因と考えられている。腸もれによって消化中の食品抗原や腸内細菌およびその生成物が体内に侵入して発症するとみられているものの、生きた人体における粘膜透過性の定量的な評価手法はこれまでなく、疾患機構と病態解明の研究は進んでいなかった。

これまで、糖類の内服後に尿に排泄される濃度を測定して粘膜透過性を評価する「ラクツロース・マンニトール法」がほぼ唯一の粘膜透過性評価法として用いられてきたが、この方法は1日分の蓄尿が必要なため被験者の負担が大きく、消化管運動や食事、腎機能が測定値に影響を及ぼすことなどが問題点として挙げられていた。

内視鏡検査時に散布したインジゴカルミンの濃度で粘膜透過性を評価、有用性を確認

研究グループは今回、「内視鏡検査で用いたインジゴカルミンが検査後、尿中に排出される」という現象に着目し、この色素剤を用いた粘膜透過性評価法を検討した。

検査でインジゴカルミン散布後、その血中濃度を潰瘍性大腸炎患者11人と健常者5人について病態との関連を評価した結果、両グループで濃度に有意な差が見られ、同手法の有用性が示唆された。インジゴカルミンの血中濃度測定には当社の液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8060」が用いられた。従来の潰瘍性大腸炎や過敏性腸疾患症候群の治療では、薬の投与後の自覚症状で治療効果を測ってきた。そのため、新規手法の実用化は患者の負担が抑えられる効率的な治療につながる。

新規評価法の臨床的エビデンス取得を進め、創薬研究や臨床検査への貢献を目指す

兵庫医科大学と島津製作所は「本手法の臨床研究を継続し、臨床的意義を確立させる。今後、協力して本手法の臨床的エビデンスの取得を進め、創薬研究を支援する研究用機器の開発や臨床検査に使用できる医療機器の開発を目指す」と、述べている。

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