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パーキンソン病、血清・脳脊髄液中尿酸レベル低下+プリン代謝異常を発見-藤田医科大

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2024年09月18日 AM09:20

血清尿酸値低下を高率に認めるパーキンソン病、そのメカニズムは不明だった

藤田医科大学は9月10日、パーキンソン病患者における血清および脳脊髄液中の尿酸レベルの低下と、プリン代謝異常を発見したと発表した。この研究は、同大脳神経内科学の渡辺宏久教授、水谷泰彰准教授、島さゆり講師、医用データ科学の吉本潤一郎教授、オープンファシリティーセンターの前田康博准教授ら研究グループによるもの。研究成果は、「npj Parkinson’s Disease」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

パーキンソン病は、世界で2番目に多い神経変性疾患。これまで、パーキンソン病では血清尿酸値の低下を高率に認めることが知られていた。尿酸は抗酸化作用を有するため、尿酸の低下は酸化ストレスを高め、結果としてドパミンを作る中脳の黒質神経細胞を喪失させる可能性があると考えられていた。しかし、イノシンを加えて尿酸を上昇させても疾患の進行は抑制できなかった。このため、尿酸はなぜ低下するのか、尿酸低下の意義は何か、また尿酸の代謝の上流にあたり、細胞のエネルギー代謝に不可欠な分子ATPを構成する重要な成分であるプリン体の代謝物は、どのようになっているのかが大きな疑問としてあった。

エネルギー代謝障害や運動不足など、尿酸の低下と関連の可能性が数理モデルから示唆

今回の研究では、パーキンソン病患者と健康な対照者の血清および脳脊髄液中の尿酸、尿酸の上流にあたるプリン代謝物質イノシン、ヒポキサンチン、キサンチンのレベルを比較した。その結果、パーキンソン病患者では血清と脳脊髄液中の尿酸レベルが低下していることを確認した。さらに数理モデルと呼ばれる先端的な解析により、尿酸の低下は主に体重、性別、年齢といった外的要因の影響を受けることが示された。これにより、パーキンソン病では、体重、性別、年齢、すなわちエネルギー代謝障害や運動不足などが尿酸の低下と関連している可能性が示唆された。

患者では血清中ヒポキサンチン/脳脊髄液中イノシン・ヒポキサンチンのレベル低下

また、パーキンソン病患者は、血清中のヒポキサンチンと脳脊髄液中のイノシンとヒポキサンチンのレベルも低下していることが示された。その意義を考えるため、イノシンおよびヒポキサンチンとATPとの関係を検討した。

、プリン体再利用システムの障害が示唆

ATPは、細胞のエネルギーの燃料として使われた後、ADP→AMP→IMP→イノシン→ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸と分解される。しかし、ヒトでは他の動物と違って、ヒポキサンチンの90%はリサイクルされて、ATPの原料となる。パーキンソン病における血清や脳脊髄液中のヒポキサンチンの低下はエネルギーを作る仕組みがうまく働いていない可能性を示唆し、脳脊髄液中のイノシンの低下は、中枢におけるプリン体の低下を意味する可能性がある。これらの結果は、パーキンソン病においてエネルギー産生に重要なプリン体の再利用システムに障害があることを示唆する。

今回の研究成果により、パーキンソン病におけるエネルギー代謝の理解を深め、新たな治療法の開発に貢献する可能性がある。研究チームは、プリン体の再利用を促進する治療法の開発や、運動療法および栄養管理によってエネルギー代謝を改善するアプローチを通じてパーキンソン病の進行を抑え、生活の質を大幅に向上させる戦略の開発につなげていきたいと考えている、と研究グループは述べている。

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