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うつ病と社交不安症で共通/相違の脳機能異常を解明、安静時fMRIで-千葉大

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2024年09月03日 AM09:00

fMRIの ALFF・FCの指標を用いて、MDDとSADの共通点などを解析

千葉大学は8月27日、fMRIを用いてうつ病(Major Depressive Disorder, )および社交不安症(Social Anxiety Disorder, )の脳機能を局所レベルとネットワークレベルの双方で比較することにより、両疾患の脳機能の共通点と相違点を明らかにしたと発表した。この研究は、同大子どものこころの発達教育研究センターの和俊冰(Junbing He)特任研究員、平野好幸教授、清水栄司教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Affective Disorders」にオンライン公開されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

MDDは持続的な気分の落ち込みと興味・喜びの消失を特徴とする精神疾患で、SADは社交的な状況に対する持続的な恐怖・不安を特徴とする精神疾患だ。MDDとSADの併存率は15~74.5%と高く、感情調節や社会的機能の障害、注意の偏りなど共通する症状も数多く見られる。また、抗うつ薬や認知行動療法などの同一の治療戦略に反応することから、両疾患は類似した病因と病態生理を持つ可能性が示唆されている。また、生活の質を大きく損なうだけでなく自殺のリスクを高めるため、正確な診断と速やかな治療介入が不可欠だ。より適切な診断や治療を行っていくためには、両疾患の脳機能にどのような共通点や相違点があるのか、健常者と比べて脳のどのような機能に異常が生じてしまっているのかを明らかにする必要があるが、これらはまだ十分に解明されていない。

近年、fMRIを用いて局所的な脳活動の指標である低周波変動振幅(Amplitude of Low-Frequency Fluctuations, ALFF)や脳の領域間(ネットワーク)の機能的な関係性の強さの指標である機能的結合性(Functional Connectivity, FC)を測定することで、安静時の脳の機能にどのような異常が生じているかを調べ、精神疾患のメカニズム解明を試みる研究が多く行われている。

今回研究グループは、ALFFとFCの両指標を組み合わせることで、局所レベルとネットワークレベルからMDDとSADにおいて生じている脳機能変化を総合的に探索し、両者の共通点や相違点、健常者との違いを明らかにした。

ALFF値、健常者・MDD患者・SAD患者で右中心後回/左後頭極/右上前頭回に有意差

研究に参加したのは選択基準を満たす健常者(HC)82人、MDD患者48人、SAD患者41人。全参加者に対してリーボヴィッツ社交不安尺度(LSAS)およびBDIIIベック抑うつ質問票(BDI-II)などの心理尺度を使用して重症度を評価し、安静状態でfMRIの撮影を行った。

まずALFFの群間比較により、3群のALFF値は右中心後回、左後頭極、右上前頭回に有意差があることが確認された。右中心後回および左後頭極において、HCと比較してMDD患者とSAD患者のALFFは減少していたが、両疾患のALFFには有意差が見つからなかった。また、右上前頭回においてSAD患者およびHCと比較して、MDD患者のALFFは増加した。

両疾患に共通する脳機能異常の類似性を確認、臨床症状の違いも解明

次に、上記の群間比較で得られたALFFに有意差がある3つの脳領域を、seed-to-voxel/seedto-ROI脳機能的結合解析のシード領域として使用した。その結果、3群間では、右中心後回内、右中心後回と小脳虫部第3小葉の間、右中心後回と左視床の間のFC、また、左後頭極と右中側頭回側頭後頭部の間のFC、さらに、右上前頭回と右縁上回後部の間のFCに有意差が示された。

このように、MDD患者とSAD患者が局所レベルおよびネットワークレベルで共通する、あるいは特異的な脳機能異常を示した。これらの脳領域は、身体感覚、視覚処理、認知機能および感情調節などの機能に関連しているため、両疾患の共通的な脳機能異常は、MDD患者とSAD患者における感情障害と認知障害などの類似性を説明するものと考えられる。また、右上前頭回において、MDD患者ではHCとSAD患者の両方よりもALFFが高いことが示された。この異なる脳機能異常は、MDD患者とSAD患者の臨床症状の違いを説明し、両疾患を区別する特徴になる可能性がある。

両疾患を区別し診断するためのバイオマーカー開発や治療戦略の開発に貢献する可能性

今回の研究では、ALFFとFCを組み合わせて、局所的なレベルとネットワークレベルで健常者、MDD患者およびSAD患者3群の脳機能の違いが検討された。その結果、MDD患者とSAD患者で共通する脳機能異常と異なる脳機能異常があることが示された。

「本研究の結果は、両疾患の神経メカニズムの解明、診断バイオマーカーおよび新しい治療戦略の開発の一助となることが期待される」と、研究グループは述べている。

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