炎症性腸疾患が増悪する原因はストレスや不眠が原因と考えられていたが詳細は不明
東北大学は8月7日、慢性不眠が炎症性腸疾患を悪化させる可能性があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大病院消化器内科の大山秀晃医師(現八戸市立市民病院)、諸井林太郎病院講師、正宗淳教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Crohn’s and Colitis」の電子版に掲載されている。
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炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎やクローン病など慢性的な腸の炎症を引き起こす病気の総称で、病状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことを特徴とする。症状が増悪する原因はこれまで明らかになっていなかったが、精神的ストレス、不眠などがその一因であると考えられていた。
慢性不眠の潰瘍性大腸炎患者は治療強化が必要な割合「高」、クローン病は割合変化なし
研究グループは今回、炎症性腸疾患で通院中の患者を対象に睡眠に関するアンケート調査を行い、慢性的な不眠状態を有する群と有しない群に分け、その後の炎症性腸疾患の病状がどう変化するかを経過観察した。
その結果、慢性的な不眠を有する群は、有しない群に比べて炎症性腸疾患の治療法の変更・強化を必要とした割合が高いことを明らかにした(不眠群23.3%、非不眠群 8.9%、P=0.0033)。
炎症性腸疾患の中でも特に潰瘍性大腸炎の患者で、慢性的な不眠を有する群は有しない群に比べて、治療変更・強化を要した割合が高いことが判明(不眠群34.5%、非不眠群10.3%、P=0.031)。一方で、クローン病の患者では慢性不眠の有無で治療内容の変更・強化を必要とした割合は変わらなかった。
これらのことから、慢性的な不眠は潰瘍性大腸炎の病状が悪化する要因の一つになり得る可能性が示唆された。
不眠に対する治療に「腸炎増悪抑制効果」があるか調査予定
今回に研究成果により、慢性不眠を有する潰瘍性大腸炎患者に治療介入を行うことにより、腸炎増悪の危険性を低下させられることが期待される。
「今後は本アンケート調査をさらに拡大し、より多くの患者を対象に同様の検討を行う。また、不眠に対する治療が腸炎の増悪を抑制する効果があるか否かも調査する予定だ」と、研究グループは述べている。
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