子ども時代のSC、長期的に主観的ウェルビーイングに与える影響は?
東北大学は8月1日、幼少期の親と過ごした時間およびソーシャルキャピタル(SC)と、成人期のウェルビーイングの関連性を調べるため、大学生292人を対象に行った調査の結果を発表した。この研究は、同大大学院情報科学研究科(兼)加齢医学研究所の細田千尋准教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Psychology」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
SCとは人と人の信頼関係、相互扶助のネットワークを指し、個人および社会全体のウェルビーイングや健康に寄与することが多くの研究で示されている。一方で、子ども時代のSCが長期的に主観的ウェルビーイングに与える影響については、まだ十分に解明されていない。これまでの研究は、親子関係や養育態度が子どもの社会的、感情的、および認知的発達に与える影響を探るものが中心であり、子ども時代の信頼できる人とのつながりの重要性はあまり注目されていなかった。
大学生292人対象、調査実施
そこで、今回研究グループは、大学生292人を対象に、子ども時代のSCおよび親と過ごした時間が、成人期の主観的ウェルビーイングと認知機能に与える影響を調査した。参加者は幼少期の社会的交流と親と過ごした時間については、振り返って回答した。
子ども時代に母と関わった時間が成人期の認知機能の高さと関連の可能性
研究の結果、子ども時代に両親と関わった時間の長さは、成人期のウェルビーイングと関連が見られなかった。一方で、子ども時代のSCと成人期の主観的ウェルビーイング(ポジティブ感情)に有意な正の相関があることが明らかになった。また、子ども時代に母親と関わった時間は、成人期の認知機能の高さと関連している可能性が示された。子ども時代には、親子の時間だけでなく、親以外の人とのつながりを持つことが、その発達に重要である可能性がある。
今回の回答には限界もあるため、長期観察での検証が望まれる
同研究成果は、幼少期に親との関わりと親以外との関わりの両方が、成人するまでの長期的にわたって情緒や認知的発達に影響を及ぼす可能性を示唆している。親と過ごす時間だけでなく、親以外の人との信頼を伴うつながりを築く機会を増やすことの重要性を示唆した。幼少期におけるSCの重要性を認識し、子どもたちが多様な社会的ネットワークを構築できる環境を提供すること、また、親子関係の質を高めるための支援策を強化することなど、子育てにおける環境構築やそのための政策立案などに有用な情報として貢献できることが期待される。
なお、同研究は、対象者が特定の年に大学生だった人に限られていること、幼少期の経験を振り返って回答しているという限界がある。今後はこれらの問題を解決できる長期観察で検証することが望まれる、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース