医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > アスリートの即時的なバランス調整、眼球+両手協調運動が有効な可能性-宇都宮大ほか

アスリートの即時的なバランス調整、眼球+両手協調運動が有効な可能性-宇都宮大ほか

読了時間:約 2分51秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2024年08月05日 AM09:30

ウォーミングアップで即時的にバランス改善するトレーニングは?

宇都宮大学は7月26日、眼球運動および両手協調運動を組み合わせたトレーニングによって、アスリートのバランスを即時的に安定させることを見出したと発表した。この研究は、同大共同教育学部の松浦佑希准教授、(研究当時、現:)の坂入洋右教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Open Access Journal of Sports Medicine」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

アスリートを対象としたバランストレーニングは、スポーツ関連の怪我のリスクを軽減させることや、機能的パフォーマンスの向上に役立つことが示されている。従来バランストレーニングとして実施されている内容としては、安定/非安定面上での、開眼もしくは閉眼状態での両足/片足の立位、バランストレーニングと筋力トレーニングを組み合わせたトレーニングなどがある。これらは長期的なトレーニングによって効果が得られる。一方、これらをウォーミングアップとして行った場合、ウォーミングアップ運動直後にバランスを改善する効果はなく、短期的にはアスリートのバランスの安定に悪影響を及ぼすことが報告されている。

ウォーミングアップは、筋繊維の伝導体性感覚系、体性感覚系の効率などを高めるなど、最適なパフォーマンスを達成するために必須のものであり、そのような場面で即時的にバランスを改善するウォーミングアップ運動も必要であると言える。

バランス能力改善の「」、姿勢・バランス維持に関わる「

そこで研究グループは、姿勢やバランスの維持に直接的に関わる前庭系に直接的にアプローチをすることによってバランス能力を改善させる、「眼球運動」に着目した。眼球運動によってバランスを改善させる効果については、脳卒中などのリハビリテーションの分野を中心に報告されている。また、姿勢やバランスの維持には、前庭系だけでなく、小脳も深く関わっていることから、小脳による制御および活性化と深く関わる「両手協調運動」にも着目。前庭系に対して有益である眼球運動と小脳を活性化させる両手協調運動を組み合わせて実施することにより、バランスに対してより有益な効果が得られると仮説を立て、検証した。

健康な大学生アスリート30人対象、眼球運動・両手協調運動を2通りのトレーニングで検証

具体的には、健康な大学生アスリート30人を対象とし、次に示す3条件のトレーニングを実施。(1)眼球運動、(2)両手協調運動、(3)眼球運動と両手協調運動を組み合わせた運動(1+2)。眼球運動については、追跡運動(2つ)と適応運動(4つ)からなる6つのエクササイズでプログラムを構成し、両手協調運動については、同位相の両手協調運動(3つ)と逆位相の両手協調運動(3つ)を用いた。組み合わせ運動については、追跡運動(1つ)と適応運動(2つ)、同位相の両手協調運動(2つ)と逆位相の両手協調運動(1つ)からなる6つのエクササイズからなるプログラムで構成した。いずれのプログラムも、約5分間で実施した。

眼球運動・両手協調運動は偶発的な揺れを即時的に減少、組み合わせで姿勢の安定性高める

その結果、(3)眼球運動と両手協調運動を組み合わせた運動は、バランス時の偶発的な大きな揺れを減少させ、姿勢の安定性を即時的に高めることが確認された。(1)眼球運動および(2)両手協調運動を独立して実施した場合も、バランス時の偶発的な大きな揺れについては、即時的に減少させることが確認された。

これらのことから、今回の研究では、眼球運動および両手協調運動はバランス時の偶発的な揺れを即時的に減少させること、それら組み合わせた運動ではさらに姿勢の安定性を高める効果があり、アスリートの即時的なバランス調整方法として有効である可能性を示した。

ウォーミングアップ・コンデショニング調整への活用に期待

今回の研究では、眼球運動および両手協調運動を組み合わせた運動が、アスリートのバランス時の偶発的な揺れを即時的に減少させ、姿勢の安定性を高める効果があることを確認し、アスリートの即時的なバランス調整方法として有効である可能性を示した。今後、同研究で実施された運動を長期的にウォーミングアップとして実施し、各アスリートの実際のパフォーマンス発揮場面への効果を検討する意義があると考える。また、従来実施されているバランストレーニングに同研究で実施した運動を加えることで、よりバランスの改善効果が得られる新たなトレーニングとしての活用可能性も考えられる、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 老化による幹細胞の疲弊、関連する染色体と遺伝子発現の変化をハエで発見-理研
  • オートミール混入ヒラタチャタテ摂取によるアナフィラキシー、国内初症例-東邦大ほか
  • 肺切除術後の肺静脈血栓症・脳梗塞症発症の高リスクをまとめ論文発表-京都府医大ほか
  • AI搭載の「胎児心臓超音波スクリーニング支援システム」開発、国内承認-理研ほか
  • 糖尿病、インクレチン関連薬使用中はグルカゴン応答性インスリン分泌低下-岐阜大ほか