■電子処方箋普及カギに
アマゾンファーマシーでは、利用者は電子処方箋の処方内容(控え)、引き換え番号の写真を撮ってアマゾンアプリ上の自身のアカウントにアップロード。登録されている薬局で予約した日時に薬剤師によるオンライン服薬指導を受けた後、処方薬を自宅など指定の住所に配送、または薬局の店舗での受け取りが可能になる。電子処方箋対応医療機関で診療を受けるか、患者向け総合医療アプリ「クリニクス」を導入している医療機関でオンライン診療を受けて処方箋の交付を受ける必要がある。
同社が自前で薬局を持つのではなく、利用者が選択した薬局がオンライン服薬指導から処方薬の配送まで行い、処方箋に関する疑義照会もその薬局が対応する。服薬指導を行う店舗は▽アインホールディングス▽ウエルシアホールディングス▽クオールホールディングス▽新生堂薬局▽中部薬品▽トモズ▽ファーマみらい▽薬樹▽ユニスマイル――の9社2500店舗。
最大手のウエルシア薬局は全体の7割強に上る1920店舗で導入。従来からオンライン服薬指導サービスを展開してきたが、アマゾンファーマシーとの親和性が高いと判断した。1都3県で展開する薬樹は142店舗に導入し、「患者との接点を持つ機会が拡大する」と期待した。
また、新生堂薬局は93店舗で導入し、「幅広い年代の患者にアクセスできるようになると共に、それぞれの患者のニーズに合わせたオンラインとオフラインを融合させた柔軟なサービス提供が可能」としている。トモズは30店舗、クオールは神奈川県横浜市の店舗などでサービスを始めた。
薬局が処方箋を応需した場合における同社と薬局の売上配分や、薬局から同社に支払う手数料などは明らかにしていない。ターゲット層は、慢性疾患などで定期的に処方薬が必要とされている利用者や移動や待ち時間を減らしたい現役世代などだ。患者の利便性や医薬品アクセスを高めると共に、伸び悩んでいるオンライン服薬指導や処方薬配送サービスの普及を目指す。
服薬指導を行う薬局店舗は順次拡大も検討する。電子処方箋やオンライン服薬指導、患者宅への処方薬配送への対応が求められるため、中小薬局にはハードルが高いと見られる。
同サービスの提供開始は既に処方箋医薬品の配送を始めているウーバーと同様に、物流のプラットフォーマーが薬局業界に参入する動きだ。日本薬剤師会の岩月進会長は24日の都道府県会長協議会で、「地域によって事情が違う。(実店舗が地域にあり)地域で対応できるのが日薬の強み」と強調。原口亨副会長は、「現状は敵か味方か分からないので事実ベースで対抗していくしかない」と述べ、日薬の電子お薬手帳にオンライン服薬指導を実装するなどの方向性を提案した。
ある地域薬剤師会会長は「患者に薬を届けやすくなるのはいいことだが、あまりにもアクセスが自由になることで薬物濫用や個人情報の流出、何か起こった場合の責任の所在をどうするかなどの課題に対応しなければならない」と指摘。「一定の規制を定めておくことが必要」との考えを示す。
日薬幹部は、「電子処方箋の導入がサービスの前提となり、米国のように処方箋全体の3分の1程度まで電子処方箋が広がらないと難しいのではないか」と懐疑的な見方をした。