青森県内では、病院ごとにトレーシングレポートの様式が異なることや、青森市内と市外の薬局では病院から求められる報告内容も異なることが薬薬連携の阻害要因になっていると分析。トレーシングレポートの共通化を目指すため、2021年11月に「県がん診療連携協議会薬物療法部会」を通じて検討を開始し、2023年11月に「薬薬連携ワーキンググループ」を発足した。
ワーキンググループは、薬物療法部会員である病院薬剤師14人に、県薬剤師会理事2人、県病院薬剤師会副会長1人などで構成されており、▽トレーシングレポートの運用▽癌薬物療法に関する地域の人材育成に関すること――など4項目を協議内容とし、現在トレーシングレポート共通化に向けた項目選定を検討している。
県内での薬薬連携拡大を目的としたトレーシングレポート共通化には、薬物療法部会に加入している14施設全てが賛成した。
掲載する有害事象項目は、アンケート結果で合致率の高かった項目を採用した。
副作用の項目ではグレード0について評価したことが薬局にも分かるよう掲載し、重篤な副作用となるグレード3以上については、受診勧告した症状をレポート上で一目で分かるよう作成。「副作用症状が発現した時期」に関する項目を追加した。
抗癌剤服用中の患者で癌性疼痛を併発した患者に対しては、「保険薬局がサポートした際、痛みに困っている患者についても、合わせて報告できたほうがいいのではないか」との意見も出たため、疼痛フォローの項目を盛り込んだ。アドヒアランスの確認、手書きやPC作成等に対応するため使い分け可能な複数バージョンを用意した。
2023年12月に行われた薬物療法部会の14施設を対象としたアンケート調査結果によると、薬局と連携を取って副作用の早期介入などに取り組む施設を評価する連携充実加算の「算定あり」が半数の7施設にとどまった。
連携充実加算の算定対象や規模は医療機関によって様々であり、トレーシングレポートの件数割合も医療圏域を問わず差があった。今年度は共通トレーシングレポートの運用開始に向け、県内の薬局や医療機関への周知を開始するとしている。