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【生物由来技術部会】ハートシート「承認不適切」-きょう24日にも可否審議へ

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2024年07月24日 AM11:12

薬事審議会再生医療等製品・生物由来技術部会は19日、条件・期限付き承認されていたテルモのヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「」の製造販売承認を審議し、承認は適切でないとの結論を示した。全症例を対象とした使用成績調査と臨床研究の比較結果から同製品の優越性は示されなかったと判断した。ただ、不承認には慎重な議論が必要として、きょう24日の薬事審議会でも承認の可否を審議する。ハートシートが不承認となれば、条件・期限付き承認を受けた4製品のうち2製品が本承認されない事態となり、再生医療等製品における「有効性の推定」の解釈をめぐって今後、議論が加速する可能性もある。

同製品は、患者の大腿筋等から採取した骨格筋に含まれる骨格筋芽細胞由来のシートで、薬物治療等の標準治療で効果不十分な虚血性心疾患による重症心不全患者の治療として、心臓表面に移植して使用される。

2014年に再生医療等製品として製造販売承認申請が行われ、同部会で審議を行った。その結果、対象患者に一定の有効性は期待でき、安全性も許容可能としたものの、「現時点では情報が限られる」として条件・期限付き承認が妥当と判断。厚生労働省が15年9月に条件・期限付き承認を与えていた。

承認期限は当初5年間としていたが、後に3年延長され、骨格筋を採取した全患者を対象に評価を行うこととし、同社は昨年9月に改めて承認申請を行った。

期間中に得られた同製品の有効性解析対象集団49件、対照群として同製品を用いた治療を行わない患者の臨床研究102件について、主要評価項目である心臓疾患関連死までの期間を比べたところ、同製品群の対照群に対する優越性は示されなかったとした。副次評価項目である心機能に関する左室駆出率(LVEF)の改善についても同様とした。

安全性に関しても、条件・期限付き承認時に確認されたリスクや有害事象を超える新たな懸念は見られないとしつつ、有効性が示されていないため、リスク・ベネフィットの観点から許容可能とは言えないとした。

評価結果を踏まえ、同部会は医薬品医療機器等法に基づき、「同製品を承認することは適切でない」と結論づけた。他方で、不承認の措置を取ることは、条件・期限付き承認を取り消すこととなるため慎重な議論が必要とも判断し、薬事審議会でも承認の可否を審議することを決めた。

薬事審議会ではきょう24日に審議する。審議会における議論の見通しについて、厚労省は「承認が了承される場合もあるが、不可となる可能性もある」と述べるにとどめた。

同部会の結論を受け、テルモは20日付で同製品の販売を終了し、今後は医療機関と連携しながら既に同製品を移植済みの患者の使用成績調査を継続する方針をホームページ上で示した。使用成績調査や臨床研究の結果は、医学雑誌等で情報公開していく考え。

再生医療等製品のうち、条件・期限付き承認を受けた製品は、ハートシートを含めて4製品。既にアンジェスの遺伝子治療用製品「コラテジェン」は、市販後調査の結果を踏まえて本承認の申請が取り下げられており、条件・期限付き承認制度に対する懐疑的な指摘も予想されるが、厚労省は「今回の結果を遡って、有効性が推定されるとした条件・期限付き承認の判断が誤りだったわけではない」との見解を示している。

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