反復性膀胱炎、尿中と膣内の尿路病原性大腸菌の特徴比較報告はほとんどない
岡山大学は6月19日、反復性膀胱炎を有する閉経後女性の尿中および膣内の大腸菌について、遺伝子型と抗菌薬への感受性が一致していることを突き止めたと発表した。この研究は、同大病院泌尿器科の関戸崇了医員・定平卓也助教(感染症グループ主任)、同大学術研究院医歯薬学域(医)の荒木元朗教授、群馬大学大学院医学系研究科細菌学講座の平川秀忠准教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Infection and Chemotherapy」に掲載されている。
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尿路感染症は女性に多く、閉経後の女性では何度も膀胱炎をおこす反復性膀胱炎を発症することがある。大腸菌は、膣から膀胱に移行し反復性膀胱炎を引き起こす主な原因菌とされているが、反復性膀胱炎を発症した患者における尿中と膣内の尿路病原性大腸菌の特徴を比較した報告はほとんどなかった。
反復性膀胱炎の閉経後女性7人、尿中・膣内大腸菌の遺伝子と抗菌薬感受性を解析
そこで今回、尿中と膣内の尿路病原性大腸菌が果たして本当に関連しているのかを明らかにするため、各患者の尿中と膣内の大腸菌において、遺伝子と抗菌薬への感受性を詳しく研究した。研究では、反復性膀胱炎を発症している閉経後女性7人から採取した尿および膣分泌物を用いて、パルスフィールド電気泳動、薬剤感受性検査、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および Multilocus sequencing typing(MLST)解析を行い、大腸菌の特徴を比較した。
尿中・膣内大腸菌、遺伝子型と抗菌薬感受性の点で患者ごとに一致
その結果、閉経後女性の反復性膀胱炎における尿中および膣内の大腸菌は、遺伝子型と抗菌薬感受性の点で患者ごとに一致していることを発見した。
開発中・乳酸菌腟坐剤の効果に期待
今回の研究成果により、反復性膀胱炎を適切に管理するためには、尿中だけでなく腟内に定着した大腸菌を標的とすることが不可欠であることを見出した。研究グループが以前より研究している、新しい反復性膀胱炎の予防法・治療法としての乳酸菌腟坐剤は、腟内環境を整え、大腸菌の病原性を抑える効果が期待され、実用化に向け研究が進んでいる。世界の医療現場に腟坐剤という新たな選択肢を提供できるよう、今後も研究開発を進めていく予定だ、と研究グループは述べている。
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