RTCと併用されるアレムツズマブ、アジア人IEI患者での臨床経験は少ない
東京医科歯科大学は6月17日、先天性免疫異常症(Inborn errors of immunity:IEI)患者19人に対してアレムツズマブを前処置に使用して同種造血細胞移植を行った症例を解析し、アレムツズマブの有用性などを示したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野の宮本智史助教、小児地域成育医療学講座の金兼弘和寄附講座教授、血液内科学分野の森毅彦教授、静岡県立こども病院、北海道大学、滋賀医科大学、兵庫県立こども病院、大阪大学、京都大学、神奈川県立こども医療センター、岐阜市民病院、金沢大学、広島大学、国立成育医療研究センターらの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Immunology」にオンライン掲載されている。
同種造血細胞移植は、IEI患者に対する根治療法として位置づけられている。毒性減弱前処置(RTC)は、IEIを含む非悪性疾患に対してここ数年で適用症例数が増加している。アレムツズマブは遺伝子組み換えヒト化抗CD52モノクローナル抗体であり、リンパ球の機能を強力に抑制し、生着の促進や移植片対宿主病(GVHD)抑制のためにRTCと併用され、欧米諸国のIEI患者において有効性と安全性が実証されている。一方、アジアのIEI患者や小児における臨床経験は限られている。日本では、2020年12月にアレムツズマブが成人患者における造血細胞移植の前処置薬として承認されたが、日本の小児患者に対する至適用量やその有用性については今まであまり評価されていなかった。このような背景を踏まえ、国内においてアレムツズマブを用いて造血胞移植を受けたIEI患者のデータを後方視的に解析することにより、アレムツズマブ併用RTCの臨床的有用性を評価した。
アレムツズマブ併用RTC受けた19例を後方視的解析、18例で重症の急性GVHD認めず
国内11施設、計19例のIEI患者(日本人15例を含むアジア人17例、片親がアジア人の混血2例)を対象としてアンケートにより臨床経過を後方視的に解析した。移植後の観察期間の中央値は18か月だった。ドナーは、HLA半合致の両親(n=10)、HLA適合の同胞(n=2)、および非血縁者ドナー(n=7)だった。ほとんどの患者はフルダラビンとブスルファンから構成されるRTCを受け、アレムツズマブは多くの患者で0.8mg/kgを投与された。
18例の患者が生存しかつ安定した生着が得られ、重症な(グレード3〜4)急性GVHDは認められなかった。一方で、ウイルス感染は11例(58%)と比較的多く認められた。移植後の免疫再構築を評価するためCD4陽性T細胞の絶対数を経時的に評価したところ、移植後6か月の時点では低値(中央値241/μL)だったが、1年にかけて改善が認められた(中央値577/μL)。ほとんどの症例で良好なドナー型キメリズムが得られたが、T細胞におけるドナー型キメリズムが低く、免疫再構築も遅い症例が3例認められた。
T細胞特異的キメリズムなど持続的なモニタリングの重要性も判明
アジア人のIEI患者集団において、アレムツズマブ併用RTCを実施した同種造血細胞移植に対する後方視解析を初めて実施した。今回の試験によりアレムツズマブの有効性と安全性が示されたが、患者はしばしばウイルス感染を発症し、T細胞における免疫再構築の遅延や一部の患者においてはT細胞のドナーキメリズムの低下が認められたことから、ウイルスとT細胞特異的キメリズムの移植後の持続的なモニタリングの重要性が明らかになった。「今後、より良い免疫再構築を目指した患者ごとのアレムツズマブの至適投与量に対する知見を深めるべく、今回の研究結果を踏まえて新たな研究を計画したいと考えている」と、研究グループは述べている。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース