脳卒中患者の約43%が経験のPSP、患者のリハビリ過程などに大きな影響
畿央大学は6月13日、脳卒中後の痛みのリハビリテーション予後は、痛みの性質に依存することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院博士後期課程の浦上慎司氏、ニューロリハビリテーション研究センターの大住倫弘准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「(Prognosis of Pain after Stroke during Rehabilitation Depends on the Pain Quality」に掲載されている。
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脳卒中後疼痛(Post-Stroke Pain:PSP)は、脳卒中を発症した患者の約43%が経験するとされる痛みだ。PSPは肩の痛み、筋肉の痙攣による痛み、神経障害性疼痛など、さまざまなタイプがあり、患者の日常生活やリハビリテーション過程に大きな影響を与える。PSPの管理は患者の機能回復にとって重要であり、痛みの質に応じた個別化された治療が理想とされている。
PSP有する患者85人対象「痛みの質」4分類、リハビリで痛みの強さ縦断的に観察
今回の研究では、PSPを有する患者85人を対象に、痛みの質に基づいて4つの異なるクラスターに分類した。クラスター1は「冷たい刺激が痛いグループ」、クラスター2は「しびれが強いグループ」、クラスター3は「圧痛が強いグループ」、クラスター4は「深部痛が強いグループ」で構成。患者は、12週間にわたる運動療法ベースのリハビリテーションを受け、痛みの強さ縦断的に観察された。
従来リハビリで強深部痛群は痛み軽減、冷刺激痛・強しびれ群は痛み軽減なし
クラスター4の患者は、従来の運動療法ベースのリハビリテーションにより痛みの強度が有意に軽減されたが、クラスター1およびクラスター2の患者は痛みの軽減が見られなかった。この研究結果から、症例ごとに異なる痛みの性質によってリハビリテーション予後が異なることがわかった。
従来リハビリが効果的でない場合、追加治療が必要となる可能性
痛みの性質は、症例の痛みを発生させている病態メカニズムを表現していると考えられていることから、それぞれの病態によってリハビリテーション予後が異なることが考えられる。そのため、個別化されたリハビリテーション戦略が重要であり、特に、従来のリハビリテーションが効果的でない場合、経頭蓋直流刺激などの追加の治療法が必要となる可能性がある。
リハビリ初期に痛みの性質評価で予後予測に期待
今回の研究では、症例が日常的に表現する痛みの性質(ズキズキなど)を軽んじてはいけないということが再確認された。また、リハビリテーションの初期段階での痛みの性質の評価をすることで、予後を予測できるだけでなく、リハビリテーションの選択を迅速に提供できるようになる、と研究グループは述べている。
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・畿央大学 プレスリリース