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胆道閉鎖症、周産期の胆囊壁異常が肝内胆管へ波及する病態解明-東大ほか

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2024年06月18日 AM09:00

胆囊上皮制御するSox17変異の関連が示唆される胆道閉鎖症、その原因は未解明

東京大学は6月13日、新生児の胆道閉鎖症において、胆囊壁の異常が総肝管を介して肝内胆管へ波及するという周産期の肝門部の胆管炎の病態を解明したと発表した。この研究は、同大大学院農学生命科学研究科の金井克晃教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Communications Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

胆道閉鎖症は、周産期の赤ちゃんに発症する原因不明の肝外胆管の硬化性胆管炎を主徴とする難治性の胆汁うっ滞性疾患で、肝門部の胆管の閉塞・破壊により閉塞性黄疸と肝障害を引き起こし、外科治療なしで放置した場合は、2~3年以内に肝硬変により死に至る。その治療には、早期に胆囊を含めた肝門部の肝外胆管を切除し、葛西手術(肝門部腸吻合によるバイパス手術)を実施するが、その後も半数以上の患者はさらに生体肝移植を必要とする。

獣医学領域でも、胆囊をもつ動物では、胆道閉鎖症は非常になじみ深く、乳幼子のヒツジ、ヤギ、ウシなどは、100頭以上の胆道閉鎖症のエンデミック発生が有名である一方、胆囊を持たないウマではほぼ発症例が無いことが知られている。研究グループは、胆囊上皮のマスター制御遺伝子であるSox17のヘテロ変異マウスが、胆囊壁の低形成に伴い胆道閉鎖症に類似した肝障害を示し、その7割の個体が新生致死となることを見出している。また、ヒト胆道閉鎖症の3分の1の症例で、SOX17陽性の胆囊上皮細胞の機能低下が認められており、周産期の胆囊自体の異常が、一部の胆道閉鎖症の原因となっていることが強く示唆されている。しかし、今まで、周産期の胆囊の異常が、どのように肝障害を引き起こすのかは大きな謎に包まれていた。

Sox17ヘテロ変異マウス胎子解析、肝門部で総肝管消失し複数の細い肝管に細分岐

研究グループは、新規の子宮内胎子の順向性の胆道造影法を用いて、Sox17ヘテロ変異マウスの胆囊壁の低形成による胆汁うっ滞部位の可視化と胆汁の流れを定量的に解析した。その結果、+/-胎子において肝病変が重篤な個体ほど、胆汁流量が有意に低下し、肝辺縁部で胆汁の停滞が認められた。野生型では、肝内の左右の肝管は、肝門部で一本の総肝管に合流した後、胆囊-胆囊管と総胆管へと連結する。しかし、Sox17+/-胎子の肝門部では、総肝管は消失し、ヒト胆道閉鎖症に類似した複数の細い肝管に細分岐化されることを見出した。

肝内胆管が肝外まで引き出され、胆汁うっ滞と肝線維化発生

さらに肝内胆管をGFP標識(GFP+)したSox17+/-胎子を用いた解析の結果、細分岐化した肝管壁には、GFP+肝内胆管が相補的に移動し、肝実質の境界部では、GFP+肝内胆管が肝外まで引き出されていること(肝内胆管ヘルニア)が判明した。肝小葉の内部の肝内胆管ネットワークは、肝臓辺縁部では管腔を持つ肝内胆管は減少し、さらに、肝内胆管周囲は線維化の指標であるマッソントリクローム染色が陽性となり、Sox17+/-マウス胎子では、肝細胞から産出した胆汁は、肝内胆管が未成熟なため排出されず、胆汁うっ滞と初期の肝線維化が起こっていることが明らかとなった。

ヒト胆道閉鎖症のレトロスペクティブ解析でも、葛西手術の時点での胆囊幅(胆囊壁の低形成の指標)と肝障害レベルが強い相関を示したことから、周産期の本病の発症過程において胆囊壁の破綻が肝内胆管の胆汁鬱滞と直接的に関与している可能性が示唆された。

胆囊上皮の異常、相互連結のために肝内胆管形成まで影響

以上の結果から、周産期の肝門部の胆道系はいまだ形態形成の途中の段階であり、胆囊から肝管、肝内胆管まで連続した管腔壁は、胆汁分泌開始後はお互いに強く連結(上皮バリアー)しテンションがかかりながら、肝門部の胆道の形態形成が進行中だと想定される。胆囊上皮の低形成は、肝臓の成長に伴い遠位へ牽引されることにより、総肝管を細分岐化し、さらに先の肝内胆管までも肝外へと引き出され、小葉内の肝内胆管の管腔形成まで異常が波及することが証明された。

胆道閉鎖症の早期診断・治療法開発へつながることを期待

獣医学領域では、胆囊を持つ動物であるヒツジ、ヤギ、ウシでは、胆道閉鎖症の集団発生が知られる一方、胆囊を持たないウマはその発症例が皆無であり、胆囊の存在自体が胆道閉鎖症と深く関連しているものと推測されている。今回の研究は、胆囊壁は肝門部を介して肝内胆管まで管腔上皮を共有しており、周産期の胆囊壁の上皮破綻が、肝内胆管まで悪影響が波及するという胆道閉鎖症の新しい病態の概念を提唱するものだ。この胆囊から肝内までの連続する管腔壁の相補性は、いまだに原因不明とされる胆道閉鎖症の新規の早期診断、治療法の開発へつながるものと思われる。「本研究成果が、胆道閉鎖症に苦しむ多くの子どもたちの希望となることが期待される」と、研究グループは述べている。

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