思春期のインターネット不適切使用がメンタルヘルス不調のリスクを高めるかは不明
東京都医学総合研究所は6月3日、思春期におけるインターネットの不適切使用が精神病症状(幻覚や妄想のような体験)および抑うつのリスクを高めることを確認したと発表した。この研究は、同研究所 社会健康医学研究センターの西田淳志センター長と国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所の成田瑞室長、東京大学大学院医学系研究科の笠井清登教授(同大国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)主任研究者)、安藤俊太郎准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Schizophrenia Bulletin」に掲載されている。
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インターネットの使用でイライラする、学業・家族や友人関係・睡眠などに支障が出る、使い始めるとやめられない、他の人と過ごすよりインターネットを好むなどの、いわゆるインターネットの不適切使用は、思春期にしばしば見られる問題だ。過去の研究ではインターネットの不適切使用とメンタルヘルス不調の相関は示唆されていたが、「因果関係」を説明できるような研究成果はほとんどなかった。
そこで研究グループは今回、因果関係を示せるような厳密なデータ解析を行い、思春期におけるインターネットの不適切使用がメンタルヘルス不調のリスクを高めるか否かを調査した。
12歳時の不適切使用で16歳時の精神病症状1.65倍、抑うつ1.61倍増
研究では、2002~2004年に生まれた未成年3,171人を10歳、12歳、16歳の3点で評価したデータを用いた。10歳、12歳、16歳時点でのインターネットの不適切使用と、16歳時点での精神病症状および抑うつとの関連を「g-formula」という厳密な因果推論の手法で調べた。性別によってメンタルヘルス不調の経験に差があることから男女差も調べた。さらに、インターネットの不適切使用とメンタルヘルス不調との関連における、社会的ひきこもりの役割を因果媒介分析で調べた。解析時には年齢、性別、BMI、知能指数、親の年収、近隣環境などの影響を取り除くよう統計学的に調整。また、ベースライン時点でメンタルヘルス不調があった人を除外した。これにより、因果の逆転(つまりメンタルヘルス不調がインターネットの不適切使用の原因という可能性)を厳密に防ぐことに留意した。
その結果、インターネットの不適切使用が「精神症状と抑うつのリスクを高める」ことが示された。例えば、12歳時におけるインターネットの不適切使用は、16歳時の精神病症状を1.65倍、抑うつを1.61倍に増加させた。
特に女性で影響大、約10~30%が社会的ひきこもりに媒介されていることも判明
男女差を見ると、抑うつのリスクは女性の方が大きく加算された。また、インターネットの不適切使用と精神病症状の関連のうち、9.4%~29.0%は社会的ひきこもりによって媒介されていた。
メンタルヘルス不調を経験する前にサポートを提供するなどの対策が必要
インターネットは現代人の生活に欠かせないツールであり、とりわけ若年者は使用時間が長いことが示されている。一方で、その便利さや楽しさとは裏腹に同研究で示されたようなリスクも認識しておく必要があると考えられる。
「メンタルヘルス不調を経験する前に使用を控える、親や学校がこのようなリスクを認識し適切なサポートを提供するなどの対策が重要と考えられる」と、研究グループは述べている。
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