高齢者のICT利用、人との直接的な関わり「少」が障壁になる?
大阪公立大学は6月4日、高齢者対象の健康教育プログラムへのZoomの活用で、同時双方向型のコミュニケーションを実現したと発表した。この研究は、同大大学院リハビリテーション学研究科の上村一貴准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Aging and Physical Activity」のオンライン速報版に掲載されている。
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ヘルスケアサービスへのICT(情報通信技術)の活用は、サービスへのアクセス向上や参加・継続率向上など、多くのメリットが期待される。一方、高齢者にとっては、人との直接的な関わりが少なくなることが、ICT利用の障壁になりうるとも指摘されている。
研究グループは先行研究により、主体的な学びと他者との協働を促進するアクティブラーニングを高齢者の健康教育に応用することで、介入後も身体活動・機能向上が持続する行動変容効果が得られることを報告してきた。
高齢者29人対象、Zoom群とメール群でアクティブラーニング型健康教育の効果を検証
今回の研究では、Web会議システムZoomを用いたアクティブラーニング型健康教育が、アクセスしやすさと、対人交流による受け入れやすさ・意欲向上へ良い影響を与えると期待し、調査を行った。同研究ではパイロット試験により、介入の実行可能性と身体活動への持続効果を検証。試験には、パソコンを所有し、Eメールが利用可能な地域に在住している高齢者29人が参加し、介入群と対照群へランダムに振り分けられた。介入群には、Zoomを利用して週1回90分、12週間のアクティブラーニング型健康教育介入を、対照群にはメールでの資料配信のみを行い、その効果を検証した。
Zoom群はプログラム参加・継続率良好、終了24週後の身体活動維持に中等度の効果
分析の結果、介入群におけるプログラムへの参加・継続率は良好であり、対照群と比べて介入終了から24週後の身体活動維持にも中等度の効果が確認された。
ICTとアクティブラーニングの融合により、距離や場所の制約なく、他者との協働による健康づくりを実践することが可能になる。ポストコロナ社会においてデジタル化がさらに進む中で、本プログラムは特に重要な意義を持つと考えられる。今後、規模を拡大した効果検証が望まれる、と研究グループは述べている。
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