BCL-2阻害剤ベネトクラクス、同種造血幹細胞移植後の効果は未検証
大阪公立大学は5月28日、同種造血幹細胞移植後に再発した急性骨髄性白血病患者において、ベネトクラクス治療を行った患者群と年齢や性別、再発までの期間などの背景因子を合わせた対照患者群を比較し、臨床的な治療効果を検証したところ、ベネトクラクス治療群が生存率で有意に良好であることを示したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科血液腫瘍制御学の長﨑譲慈研究医、西本光孝講師、中前博久准教授、日野雅之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Blood Cancer Journal」にオンライン掲載されている。
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急性骨髄性白血病は、抗がん剤だけでは長期生存が見込めないことが多く、治癒のためには免疫細胞による白血病細胞への攻撃(抗腫瘍免疫効果)が重要と考えられている。同種造血幹細胞移植は、ドナーの免疫細胞による抗腫瘍免疫効果を利用する治療法だが、治療自体に非常に高いリスクを伴い、患者への負担が大きい治療である。さらに、同種造血幹細胞移植を行い、治療が完遂できたとしても、白血病の再発が起こることがしばしばある。こうした移植後に再発した急性骨髄性白血病は、従来の治療に抵抗性であることが多く、また、患者への負担を考慮し、積極的な治療自体を断念せざるを得ないこともある。
近年、急性骨髄性白血病に対してベネトクラクスという新規薬剤が開発され、白血病細胞の生存維持に関わるBCL-2というタンパク質を阻害することで白血病細胞の細胞死を誘導し、治療効果を発揮することが示された。重篤な副作用は比較的少なく、高齢者でも安全に治療できるようになってきている。しかし、同種造血幹細胞移植後の患者に対する治療効果は十分に検証されておらず、特に、ベネトクラクス治療を行った場合、ドナーの免疫細胞による抗腫瘍免疫効果に対してどのような影響があるのかは不明だった。そこで研究グループは、同種造血幹細胞移植後に再発した急性骨髄性白血病患者に対するベネトクラクスの臨床的な治療効果を検証するとともに、ドナー免疫細胞による抗腫瘍免疫効果への影響を検証した。
治療成績比較でベネトクラクス治療群は有意に全生存率良好
まず、同種造血幹細胞移植後に再発した急性骨髄性白血病患者に対するベネトクラクスの臨床的な治療効果を検証するため、年齢や性別、再発までの期間、再発時の病勢、遺伝子異常など、治療効果に影響する患者の背景因子をマッチさせた対照群との治療成績の比較を行った。解析の結果、ベネトクラクス治療群は全生存率で有意に良好であることが示された。
ドナー免疫細胞ではBCL-2高発現、抗腫瘍免疫効果が増強
次に、抗腫瘍免疫効果をもたらすドナーの免疫細胞への影響を検証するため、患者の臨床検体を用いて免疫細胞の詳細な分析を行った。分析の結果、BCL-2阻害剤であるベネトクラクスの治療後には、ドナーの免疫細胞において、逆にBCL-2タンパク質の発現が高まっていることが判明し、さらに、このBCL-2タンパク質高発現の免疫細胞は白血病を攻撃する能力が増強していることが明らかになった。
このことから、ベネトクラクスは白血病細胞に対する直接的な効果だけでなく、治療によって誘導されるBCL-2タンパク質高発現のドナー免疫細胞により、抗腫瘍免疫効果を増強している可能性が示された。
白血病への抗腫瘍免疫効果を増強させる新規治療につながる可能性も
研究結果は、同種造血幹細胞移植後に再発した難治性急性骨髄性白血病に対するベネトクラクス治療を支持する根拠となると考えられる。さらに、白血病に対する抗腫瘍免疫効果を増強させる新規治療への発展につながる可能性がある。「今後、BCL-2阻害剤であるベネトクラクスが免疫細胞のBCL-2タンパク質の発現を促進させ、抗腫瘍免疫効果の増強を誘導する詳細なメカニズムの解明が必要」と、研究グループは述べている。
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