2022年に都内で在宅医療に特化した「メディプレイス365訪問薬局」を開局した佐々木健氏は、24時間365日対応の厳しさを訴えた。厚生労働省が実施した調査では「約7割の薬局が夜間・休日の体制を整えている」との結果が公表されているが、佐々木氏によると「夜間・休日対応可の薬局と連絡がつかず、緊急連絡先にも電話したが連絡がつかなかった」など対応依頼の問い合わせが入ってくるという。
佐々木氏は、在宅緩和ケアで地域の薬局が24時間365日対応を実現するためには、▽薬局内で休日対応を当番制にしておく▽どうしても訪問できない場合は近隣の365日体制の薬局と連携し、患者を紹介する――といった対応策を挙げた。
実際、祝日の月曜日に医療用麻薬である持続皮下注射の「フェンタニル」が緊急対応で必要になり、医薬品卸にも発注できないケースが発生したため、「地域でライバルだった薬局に電話でお願いした」との事例を紹介した。
その結果、地域でも連携の輪が徐々に広がっていると言い、佐々木氏は「今後は(連携を通じて)本当に対応できる薬局のリストを作りたい」と語った。
一方、創業101年を迎えた黒田薬局(東京都江戸川区)では、22年7月にクリーンベンチを設置し、同12月から麻薬注射薬の調製を開始した。調剤数は徐々に増加し、23年では年6例、24年には年11例の調製を行っている。
注射用麻薬製剤を調製できる薬局はまだ少なく、都内でも無菌調製可能な薬局は限られる。黒田薬局では、平日の営業時間を終える19時を過ぎてから緊急対応が必要な処方箋が出てくる場合も少なくなく、マンパワーの問題で当日対応が難しい処方もある。
同薬局の黒田雅子氏は、「24時間365日対応には、在宅を応需するための組織体制や連携を構築しておく必要がある。無菌調製技術の習得も課題」と語った。
一方、在宅緩和ケアの医薬品提供に訪問看護ステーション(ST)への配置可能な薬剤の範囲を拡大して対応する方向性について、在宅療養支援診療所薬剤師として働く新宿ヒロクリニックの齊藤直裕氏は、「訪看STに置くとなると訪問看護師が困るのではないか。普段使わない薬の管理まで求められる。薬局との連携不足が原因であり、訪看STに置く方法はあまり良いことではない」と述べた。