医薬品市場をめぐっては、売上上位の新薬の中心が低分子医薬品からバイオ医薬品、再生・細胞医療・遺伝子治療といった新規モダリティへと変化し、日本の医薬品産業の国際競争力低下やドラッグラグ・ロス問題が提起されている。中間取りまとめでは、政府として日本の創薬力向上に向けた戦略目標を策定した。
戦略目標では「わが国が世界に肩を並べる創薬の地となることを目指すべき」と宣言。創薬エコシステムを実現し、新規モダリティの創薬で研究開発早期段階からアカデミアやスタートアップのシーズを育て、実用化段階まで連続的支援を行う環境や体制を日本に構築する方向性を定めた。
その上で、研究開発段階から出口を見据えて研究開発をリードしたり、様々な専門家やプレイヤーと伴走支援を行う「アクセラレーター」が日本に集まることが重要と指摘。
早期段階から出口指向型の研究開発をリードするアクセラレーター人材は国内でほとんど存在していないため、海外で実績があり、薬事承認を含む実用化ノウハウを持つ人材を外資系メガファーマや米国系VC等から日本に呼び込むと共に、それらのノウハウを吸収して国内人材の育成を行う必要性も盛り込んだ。
今後、政府は外資系製薬企業やVCをメンバーとした官民協議会を設置する。創薬エコシステム育成施策の方針や進捗状況についてこれら企業のニーズを踏まえ議論を行うため、8月にも官民協議会のメンバーや検討すべき課題などを話し合う準備会合を開く。
参加企業やVCには、日本への投資やインキュベーション施設の設置、人材の定期的派遣など日本での活動へのコミットを求めることで、日本への呼び込みにつなげていくとした。
そのほか、創薬力強化に向け、ファースト・イン・ヒューマン試験や国際共同治験、シングルIRBの原則化、分散型治験(DCT)の推進など国際水準の臨床試験実施体制を整備する。医薬品開発製造受託機関(CDMO)に対する支援強化など、新規モダリティ医薬品の国際製造体制を強化する方向性も示した。
一方、ドラッグラグ・ロス解消に向けた対応策では、小児用医薬品や採算性が乏しい希少疾病用医薬品など国民に最新の医薬品が迅速に届くための施策を進めるとした。
投資とイノベーションの循環的発展が継続できる社会システムの実現も戦略目標に掲げた。革新的医薬品の価値に応じた評価方法の検討、バイオシミラーの使用促進、スイッチOTC化の推進、新技術において公的保険に加え民間保険を活用することなどを挙げた。