アジア人で有病率高いブルガダ症候群、人種特有の遺伝的リスクは不明
国立循環器病研究センターは5月17日、日本を含む東アジア人に多い心臓突然死の原因であるブルガダ症候群(BrS)について、日本と欧州の人種横断的ゲノムワイド関連解析を行い、新規リスク遺伝子座を世界で初めて特定したと発表した。この研究は、同センター研究所細胞生物学部の蒔田直昌客員部長(元副所長、兼 札幌禎心会病院循環器内科医師)らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Heart Journal」にオンライン掲載されている。
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BrSは、青壮年男性に重症不整脈や夜間突然死をもたらす遺伝性不整脈で、日本では「ぽっくり」、フィリピンでは「bangungut」、タイでは「lai-tai」とも呼ばれている。アジア人ではBrSの有病率と致死性不整脈の発生率が高い一方で、心筋NaイオンチャネルSCN5Aの変異陽性率は低いことが知られている。BrSにおける臨床的・疫学的な人種差の原因は不明であり、アジア人特有の遺伝的リスクの同定が期待されている。
BrSの日本人940例含むGWAS後、欧州データとメタ解析実施
研究グループは、日本人(BrS:940例、対照:1,634例)でゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、その後、欧州のGWASデータ(BrS:3,760例、対照:11,635例)と人種横断的にメタ解析を実施した。
人種横断メタ解析で同定された新規6含む17関連シグナル、人種間で高い相関示す
その結果、日本人特異的GWASでZSCAN20近傍に1つ、人種横断メタ解析で6つの新規リスク遺伝子座を含む17の関連シグナルが同定された。これらの対立遺伝子効果は人種間で高い相関を示し、BrSの多遺伝子構築が人種を越えて類似していることが示唆された。
遺伝的リスクと突然死リスクの直接的な関連は未解明
この研究は、BrSの新たな疾患リスク遺伝子座を明らかにし、人種差を越えた多遺伝子構築の類似性を示した。「BrS型心電図パターンの遺伝的リスクと突然死のリスクとの直接的な関連はまだ明らかにされておらず、異なるアプローチの研究手法が今後の課題となる」と、研究グループは述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース