千葉科学大は薬学部、看護学部、危機管理学部の3学部を保有している。学生確保に苦戦し、赤字経営に陥る中、2023年10月に銚子市に公立大学法人化の要望書を提出した。
市は学識経験者や経済界代表などをメンバーとした検討会を4月から開催し、8月に公立化の可否など答申書をまとめ、その後に市が最終判断を下す。
薬学部は16年度以降、入学者数が入学定員に達していない定員割れが続いており、23年度の入学定員充足率は36%、24年度は48%と低い状況にある。また、薬学部の22年度事業活動収支計算書は約2億3636万円の赤字となっており、今後改善する兆しも見えない。
大学側は、人口減や大学薬学部の新設ラッシュに加え、国際医療福祉大学が成田市、順天堂大学が浦安市に薬学部を新設したことにより、千葉県内で約300人の入学定員増となるなど学生の獲得競争が激化し、「かなり厳しい状況」と説明した。
その上で、薬学部の学生を確保するためには「公立化が必要」と訴えた。薬学部のある国公立大学19校のうち、東日本地域では国立の4校に限られることから、「公立大学が発足すれば薬学部の志願者増が大いに期待できるのではないか。知名度が上がり、全国から志願者が集まり、難易度も上がる」と重ねて公立化を要望した。
公立化した場合には、在学6年間の費用が現状の1881万円から1084万円に「学生の経済的な負担が軽減される」との試算を示し、競合する大学薬学部との差別化になるとも説明した。
これに対して、委員からは厳しい意見が相次いだ。田村秀委員(長野県立大学グローバルマネジメント学部教授)は、「志願者が集まらないのは教育の質ではないか。国家試験の合格率が低いと学生は避けていく。薬学部も14年から全国平均を下回り、今では30%しか合格していない。大学側は努力しているのか」と大学の努力不足を強く批判した。
さらに、「公立化すれば皆がハッピーというのは信じられない。教育の質が低ければ、公立化しても難しいのではないか」との考えを強調し、教育の質に問題意識を示した。
大学側は、「合格率についても願書を出した半数しか受験していない大学がある中で、本学は願書を出している人は全員受験している。卒業時の合格率は悪いが、現在は卒業者数1583人のうち1422人が合格し、90%が薬剤師になっている。卒業時に薬剤師になれなくても卒業後1~2年でなれるように予備校ともタイアップしている」と反論した。
しかし、田村氏は「最近は50~60人しか合格しておらず、ここ10年の学生は合格していない。どういう教育をして、どういう学生を育てていくのかという方向性が示されていない」と糾弾した。
一方、小栗一徳委員(公認会計士・税理士小栗事務所所長)は、「看護学部しか収支が合っていない。5年以上利益を出していない学部は閉鎖して、利益が出るところに特化しなければ改善しない」と厳しく指摘。大胆な学部再編が不可避とした。
会合後の記者会見で、矢尾板俊平委員長(淑徳大学地域創生学部長)は、「(大学側が要望している)現状維持での公立大学法人化が難しいということであれば、答申の付帯決議事項の中で、学部・学科の検討、規模の縮小を述べる必要がある」と言及。
その上で、「われわれがこういう学部をというよりも、地元のニーズが必要。東京理科大学が山口県の山陽小野田市に薬学部を設置した時も、地元の薬剤師会や産業界などの要望で作った経緯がある。地元の皆さんの意見がダイレクトに出てきてくれば、答申として示すことはできる」との考えを示した。