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視神経脊髄炎、炎症を正負に制御する新たな免疫の仕組みを解明-新潟大ほか

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2024年05月09日 AM09:10

近年増加している指定難病のNMO、若年成人の発症が多い

新潟大学は4月26日、指定難病である「(NMO)」において、ステージ依存性に炎症を正負に制御する免疫ダイナミクスを明らかにしたと発表した。この研究は、同大脳研究所脳神経内科の中島章博助教、佐治越爾助教(現・新潟市民病院脳神経内科副部長)、同大学大学院医歯学総合研究科の河内泉准教授、新潟病院脳神経内科の柳村文寛医師らと、京都府立医科大学、、まつもと医療センターなどとの共同で行ったもの。研究成果は、「Acta Neuropathologica」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

NMOおよび多発性硬化症(MS)は、視神経、脊髄や脳に炎症が起こり、視力の障害、手足の麻痺、しびれや認知機能障害などの症状が現れる神経難病。患者数は世界で250万人、日本で1万8,000人であり、近年、増加している疾患群だ。多くは社会の生産活動の中核を成す20歳から40歳台の若年成人に発症するため、再発や症状の進行を抑止することは、社会にとって極めて重要な課題だ。特に、NMOは、1891年(明治24年)青山胤通博士(東京帝国大学医学部)により症例報告されて以来、日本を含めたアジアで多いことが明らかになっている。

近年の研究成果により、NMOの標的自己抗原はアクアポリン4(AQP4)水チャネルであることが明らかとなっている。AQP4を発現したアストロサイトが、AQP4自己抗体と補体により破壊され、結果、アストロサイトの機能(神経軸索、髄鞘、血管サポート)を失うことで発作(脊髄炎や視神経炎などの病変)を引き起こす。神経機能が重度に障害された場合、車いすが必要になったり、失明したりすることがある。

DMTs登場で治療は前進、しかし自己抗体以外の免疫動態は不明なまま

2013年から血液のAQP4自己抗体を測定することで、NMOの正確な診断が可能となった。さらに、NMOに対して、2019年から順次、5種類の免疫制御治療(疾患修飾薬(DMTs))が開発され(2024年4月現在)、異常な免疫因子をある程度、制御することが可能となった。正確な診断と疾患に特化したDMTsの出現は、脳神経内科の診療にパラダイム・シフトをもたらしている一方で、自己抗体以外の免疫動態は不明なままだ。AQP4自己抗体が中枢神経の外で産生された後、どのようにして中枢神経に入り、病変を引き起こすのか、どのようにして病変を拡大させるのか、どのような機序で再発を起こすのか、いまだに多くの疑問が残されている。また、NMO治療法は完成に至っておらず、完全に神経を保護する治療法は開発されていない。以上から、免疫病態と神経破壊の全容を解明することは、DMTsによる治療をさらにアップデートし、アンメット・メディカル・ニーズに応える神経保護療法の開発への道を切り開くことになる。

ステージごとに解析、初期・早期活動性病変に好中球とTH17/TC17集積と判明

研究グループは、視神経脊髄炎および多発性硬化症患者の神経組織を用いて、ステージ(病期)ごとに浸潤する免疫細胞を病理学的手法で包括的に解析し、7つのことを世界で初めて明らかにした。

1.NMOの初期・早期活動性病変には、細胞外DNAトラップ(NETs)を示唆するシトルリン化ヒストンを持つ活性化好中球が集積する。
2.NMOの初期・早期活動性病変には、インターロイキン(IL)-17を産生する能力を持つTH17/TC17が集積する。
3.NMOの病変の大きさは、NETsを示唆するシトルリン化ヒストン陽性シグナル数やTH17/TC17と、正に相関する。以上から、NETsを伴う活性化した好中球やTH17/TC17はNMOの病変拡大に寄与する可能性が想定される。
4.NMOにはステージと関係なく、常にCD103+組織常在性記憶T細胞(TRM)が存在する。特に、初期・早期活動性病変には、細胞傷害性顆粒グランザイムを発現した病原性TRMが顕著となる。以上から、TRMは再発を引き起こすトリガーが作動すると、「細胞傷害性顆粒グランザイムを発現した病原性TRM」に変化することで活動性病変を引き起こす可能性が想定される。
5.NMOの活動性病変には、炎症を制御する力を持つ調節性FOXP3+Tregが集積する。
6.1〜5のプロセスは、ステージ依存的に進行し、NMOの免疫ダイナミクスを形成する。
7.NMOの免疫ダイナミクスを制御(好中球、TH17/TC17、TRMの活性化抑止と、FOXP3+Tregの増幅)することで、再発を抑止し、神経を保護する新たな治療法の開発が期待される。

発作・再発を予測可能なバイオマーカー開発につながる可能性

今回の成果から、NMOの免疫病態をステージごとに理解することが可能となった。その結果、NMOの発作・再発を予測することが可能な血液バイオマーカーを開発できる可能性がある。血液検査で、発作・再発の予兆を捉えることで、DMTsの切り替えを含めた適切な治療法を選択することも可能となる。さらに、NMOにおいて免疫ダイナミクスを制御する新たな薬剤を開発できれば、NMOの発作・再発抑止や神経保護に有効である可能性が想定され、患者QOL向上が期待される。「NMOで神経保護治療が成功すれば、MSなどの他の難治性神経疾患における神経保護治療への応用も期待できる」と、研究グループは述べている。

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