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5歳児の2割弱に睡眠問題あり、弘前市の未就学児の調査結果-弘前大

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2024年04月23日 AM09:00

就学前幼児の睡眠問題、家庭背景などの影響の詳細研究はなかった

弘前大学は4月15日、2013年から毎年実施している弘前市の全5歳児に対する5歳児発達健診の結果を用いて、睡眠に関する疫学調査を行った結果を発表した。この研究は、同大大学院保健学研究科心理支援科学専攻の斉藤まなぶ教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Pediatrics」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

子どもの不眠は、肥満などの健康問題の他、学業成績、認知能力、行動の問題、自殺など、心身の健康に影響することが近年明らかになってきた。また、(NDS)があると睡眠の問題が多いこともわかってきている。しかし、一般の就学前の幼児の睡眠問題の有病率、家庭背景や生活習慣の影響について詳細に調査した研究は国内外でなかった。

弘前市の5歳児2,336人対象、睡眠の疫学調査を実施

そこで研究グループは、2013年から毎年実施している弘前市5歳児発達健診の結果より、「5歳における睡眠問題の有病率がどのくらいあるのか」「発達障害児がどれくらい多く睡眠問題を抱えているのか」「家庭背景や生活習慣は睡眠問題に関係するのか」の3点を明らかにするために今回の研究を進めた。

睡眠問題の有病率は、2018年と2019年に弘前市5歳児発達健診に参加した5歳児2,055人から算出。家庭背景や生活習慣の要因における睡眠問題の有病率を算出するために、2014年と2015年に精密検診に参加した5歳児281名を追加し、合計2,336人を対象とした。未就学児のための日本睡眠質問票(JSQ-P)を用いて、合計スコアが86以上である場合に、睡眠問題があると定義。睡眠に影響を与える10因子(NDSの診断、誕生月、保育場所、収入、兄弟姉妹の数、就寝時間、、入眠遅延、)について調べた。

ASDの50.4%、ADHDの39.8%に睡眠問題あり

解析の結果、10因子のうち8つ(診断、収入、兄弟姉妹の数、就寝時間、起床時間、睡眠時間、入眠遅延、スクリーンタイム)において有意に睡眠障害の有病率が高いグループが明らかになった。また、5歳の子どもの18%に睡眠問題が存在していた。診断においては、ASDの50.4%、ADHDの39.8%に睡眠問題があった。NDSのない5歳児の睡眠問題の有病率は14.8%であり、ASD児で3.4倍、ADHD児で2.7倍、睡眠問題の有病率が高いことがわかった。この結果から、未就学児の健康診断では、睡眠に問題がある子どもが一定数いることを想定して、適切な保健指導を行う必要がある、としている。

睡眠障害の有病率が高い因子は、収入200万円未満・就寝時間22時以降など

家庭環境では収入200万円未満では30.5%、兄弟姉妹なしで24.2%に睡眠問題があった。生活習慣では就寝時間が22時以降で30.7%、起床時間が7時30分以降で30.7%、睡眠時間が9時間未満で25.3%、入眠遅延が30分以上で35.3%、スクリーンタイムが2時間以上/日で、21.1%に睡眠問題があった。これらのグループでは、睡眠障害の有病率が各因子の中で有意に高いことが明らかになった。

両親と一緒に寝る子、兄弟姉妹と一緒に寝る子よりも睡眠問題を生じる可能性

日本では伝統的に、未就学児は両親や兄弟と一緒に寝る。兄弟姉妹がいる子は兄弟姉妹と一緒に寝、兄弟姉妹がいない子は両親と一緒に寝る。日本人の成人は睡眠時間が短い傾向にあるため、兄弟姉妹がいない子どもは一緒に寝る大人の生活習慣の影響を受けやすい。これは、両親と一緒に寝る子どもは兄弟姉妹と一緒に寝る子どもよりも睡眠問題を生じる可能性が高いことを意味するとしている。

スクリーンタイム一日2時間未満の子、睡眠問題の有病率「低」

また、睡眠問題とスクリーンタイムの関連について、最近のメタアナリシスでは、ソーシャルメディアの頻繁な使用が若者の睡眠不足の危険因子であることが示されている。同研究では、スクリーンタイムが多い子は就寝時間が遅くなる傾向があることが示された。スクリーンタイムが一日あたり2時間未満の子どもは睡眠問題の有病率が低いため、スクリーンタイムを2時間未満に制限することを勧めるとしている。

発達障害と睡眠障害との関連調査では、家庭環境等の交絡因子の適切な考慮が必要

今回の研究は、日本の文化と年齢に適した睡眠尺度を使用し、5歳の未就学児に限定して人口ベースで有病率を計算した日本初の報告だ。睡眠問題の有病率は使用する調査尺度や睡眠問題の定義によって結果が変わる可能性がある。近年のメタアナリシスでも38~54%と結果について一貫性が示されていない。なお、今回用いた睡眠尺度(JSQ-P)について研究グループは、「大阪大学の研究者たちが開発し、睡眠障害の診断に基づいてカットオフが作られており、日本人の子どもの睡眠評価には信頼性が高いもの」だとしている。

睡眠は、認知機能、身体的および精神的健康、日中の行動に関連しており、発達途上の子どもにとって、とても大切な生理機能だ。子どもの睡眠の問題を詳しく調査し、まずは環境や生活習慣を調整し、子どもの睡眠を改善することが重要だ。これまでの研究では、簡単な環境や生活習慣の調整によって子どもの睡眠を改善できることが示されている。子どもの睡眠の悩みを解決するには、子どもの睡眠に良い生活習慣を発達の早い段階から家族が知っておく必要がある。今後の研究において、発達障害と睡眠障害との関連を調査する際には、家庭環境や生活習慣の要因などの交絡因子を適切に考慮する必要がある、と研究グループは述べている。

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