糖尿病予備群に対する保健指導を効率的に行うには?
新潟大学は3月21日、持続血糖測定を活用した新しい2型糖尿病予防のためのスマートフォンアプリを含むプログラムを開発し、同アプリを使用した保健指導が2型糖尿病予備群の血糖値や体重の改善に有効であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学研究室の北澤勝特任准教授、曽根博仁教授らと、SOMPOひまわり生命保険株式会社、シンクヘルス株式会社によるもの。研究成果は、国際専門誌「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism(JCEM)」誌に掲載されている。
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2型糖尿病予防には、食生活・運動習慣の改善や、肥満者では体重減量が必要で、そのためには、生活習慣記録と適切なフィードバックと2型糖尿病に関する正しい知識が重要だ。しかし実際には、健康診断などで糖尿病予備群と判定されても、本来行われるべき本格的な糖尿病への移行を予防するための保健指導は、医療者、本人の双方にとって多くの時間と労力を要するため、十分行われていない。多くの人が持つスマートフォンのアプリに、糖尿病治療で使用される持続血糖測定や適切な教育コンテンツを組み込めば、医療者、本人双方の時間と労力を節約しつつ、多くの人を対象とした効率的な2型糖尿病予防対策が可能になると考えられる。
血糖値と生活習慣の関係を記録、個別FB、教育情報提供ありのアプリを開発
今回研究グループは、血糖値と生活習慣の関係を記録し、それに基づく個別化フィードバックメッセージ機能、ならびに糖尿病専門医監修による糖尿病予防のための教育コンテンツのスマートフォンアプリを含むプログラムを開発した。持続血糖測定は、コイン大の血糖測定用センサーを腕などに貼り付けることにより、一日中血糖値を測定するもので、従来は測定時の一点しかわからなかった血糖値が、本機では食前後の変化なども含め、一日中連続して測定可能となる。
179人を対象に3か月間の比較試験、アプリ利用者で体重・炭水化物摂取量が減少
アプリを含むプログラムの有効性を調べるために、3か月間のランダム化比較試験を行った。試験には、糖尿病予備群(HbA1c:5.6%〜6.4%、空腹時血糖値:110mg/dl〜125mg/dl)で体重が多め(BMI:23Kg/m2以上)の179人が参加し、アプリを3か月間使用する群、使用しない群に分け、血糖値、体重、食事摂取量、身体活動量などの改善度を比較した。
アプリ使用群は、使用しなかった群と比較して、体重が0.93kg減少し、正常な血糖範囲(70〜140mg/dl)に入っている時間が1日あたり33分増加し、炭水化物摂取量も1日あたり18g減少した。これらはいずれも統計学的に有意だった。HbA1cがやや高め(5.9%以上)の人では治療効果が高い傾向にあった。また、このアプリ使用群では、現行ガイドラインで糖尿病予防に有効とされる2kg以上の体重減少を達成した人が、使用しなかった群と比較して約2倍増加した。
保健指導に活用できるよう大規模・長期で検証
今回、持続血糖測定と教育コンテンツを組み込んだ新しい2型糖尿病予防のためのスマートフォンアプリを含むプログラムを活用した保健指導が食生活、体重、血糖値を改善させることが明らかになった。「同アプリの使用が実際に2型糖尿病の発症を予防できることを確認するには、より多くの人を対象にしたより長期の研究が必要で、どのような人に特に有効性が高いかなどについても検証が必要だ。引き続きプログラムの改良と実際の予防効果確認のための臨床研究を行っていきたい」と、研究グループは述べている。
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