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発症時刻不明の脳梗塞、症状の発症様式によるtPA静注療法の有効性確認-国循ほか

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2024年03月27日 AM09:10

起床時発症/非起床時発症時刻不明脳梗塞、異なる集団と考えた場合のtPAの効果は?

国立循環器病研究センターは3月18日、正確な発症時刻が不明の脳梗塞患者における、症状の発症様式による静注血栓溶解療法の有効性と安全性について解析した研究をまとめたと発表した。この研究は、同センター脳血管内科の鴨川徳彦医師、三輪佳織医長、古賀政利部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Stroke」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

急性期脳梗塞に対して高い治療効果を示す治療法として、遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ(recombinant tissue-type plasminogen activator:rt-PA)を用いた静注血栓溶解療法(以下、)がある。発症から4.5時間以内の患者に使用することが出来るが、4.5時間を超えた患者に対しては使用することが出来ない。一方、脳梗塞患者の約2割は、睡眠中に脳梗塞を発症して、朝起きた時に症状に気が付いたり、会話やコミュニケーションが困難となった状態を他者に発見されたりするケースであり、正確な発症時刻がわからない。このことから、従来このような患者はtPA静注療法を受けることが出来なかった。

発症時刻不明の脳梗塞患者に対して、専門的な頭部画像診断を用いて発症時刻を推測した後に、治療適応のある患者にtPA静注療法の治療効果を確かめる臨床試験が国内外で行われた。EOS(Evaluation of unknown Onset Stroke thrombolysis trials)研究では、これらの無作為割付試験の個別臨床情報を統合したメタ解析(過去に行われた複数の研究結果を統合する統計手法)とシステマティックレビュー(特定の研究課題について系統的に学術論文を調査し、研究結果を適切に統合・分析し、包括的に評価すること)を行い、発症時刻不明脳梗塞患者に対し、tPA静注療法が転帰改善に有効であることを解明し、2020年のLancet誌に報告されている。

今回の研究では、EOS研究の個別臨床情報を用いて、発症時刻不明の脳梗塞の症状の発症様式に関するサブ解析研究を行った。朝の起床時に症状を自覚する起床時発症脳梗塞と、発症を目撃されておらず、かつ意識障害や失語症、認知機能障害などのために症状発症時刻が確認できない脳梗塞(非起床時発症時刻不明脳梗塞)は、少数の観察研究から神経学的重症度や画像所見、臨床経過に違いがあることが示唆されていた。しかし、両者を異なる集団としてtPA静注療法の効果を検証した報告はなかった。

EOS研究634例対象、発症様式の異なる2集団でtPA静注療法の有効性・安全性を検証

今回、「発症時刻不明の脳梗塞患者に対するtPA静注療法と対照治療の無作為化比較を、専門的な頭部画像診断を用いた患者選定に基づいて行う」という条件を満たす4つの臨床試験を統合したEOS研究のデータセットを用いた。欧州で行われたWAKE-UP試験と、日本のTHAWS試験(THrombolysis for Acute Wake-up and unclear-onset Strokes with alteplase at 0.6 mg/kg)、豪州を中心に行われたEXTEND試験と、欧州で行われたECASS-4試験が含まれている。このうちTHAWS試験は、日本医療研究開発機構(AMED)の研究助成を受けて、国循を中心に国内多施設共同で行われ、主解析論文はStroke誌に報告している。

EOS研究の全登録症例843例のうち、症状覚知の様式のデータのある634例を本研究の対象とした。発症様式により、「起床時発症脳梗塞」と「非起床時発症時刻不明脳梗塞」に分類し、tPA静注療法の有効性と安全性をそれぞれ検証した。発症から90日後の患者自立度を、修正ランキン尺度(0:後遺障害なし~6:死亡の7段階の評価法)を用いて評価し、完全自立の状態とみなされる同尺度の0または1の割合を主要評価項目とした。

起床時発症脳梗塞、tPA静注療法で約50%転帰改善傾向

研究の結果、起床時発症脳梗塞の患者において、修正ランキン尺度の0または1の割合は、実薬群54.8%、対照群45.5%で、年齢や初期脳卒中重症度、、頭蓋内閉塞血管の有無、組み入れた臨床試験で補正した後のオッズ比は1.47となり、tPAを用いることで約50%の転帰改善の傾向が得られた。安全性評価については、神経症状の悪化を伴う頭蓋内出血(症候性頭蓋内出血)が実薬群で1.8%、対照群で0.3%であり、死亡は実薬群で4.0%、対照群で1.9%だった。

非起床時発症時刻不明脳梗塞、tPA静注療法で約80%が転帰改善傾向

一方、非起床時発症時刻不明脳梗塞患の患者において、修正ランキン尺度の0または1の割合は、実薬群37.2%、対照群29.2%で、年齢や初期脳卒中重症度、心房細動、頭蓋内閉塞血管の有無、組み入れた臨床試験で補正した後のオッズ比は1.76と、同じくtPAを用いることで約80%の転帰改善の傾向が得られた。安全性評価については、症候性頭蓋内出血、死亡ともに実薬群で1例ずつ生じたが、対照群ではいずれもなかった。非起床時発症時刻不明脳梗塞の登録症例数が少数であるため、統計学的な有意確率は得られなかったものの、対照と比べてtPA静脈療法の転帰改善効果が示唆され、また安全性の群間差も許容範囲内だった。

いずれの発症様式も有効・安全性が示されたが、今後さらなる検証が必要

発症時刻が不明の脳梗塞患者について、専門的な頭部画像診断を用いると発症時刻が推定でき、それに基づいた患者選定を行い、tPA静注療法の効果を検証したところ、起床時発症脳梗塞と非起床時発症時刻不明脳梗塞のいずれの発症様式においても有効かつ安全であることが示された。今回の研究には、広範な脳梗塞の病巣や重篤な神経障害を有する患者、カテーテルを用いた血栓回収療法が選択される可能性のある患者などが含まれておらず、今後のさらなる検証が必要だ、と研究グループは述べている。

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