強膜の詳細の確認を、眼球広範囲で調べることは不可能だった
東京医科歯科大学は3月7日、polarization-sensitive OCT(偏光感受型光干渉断層計)という新たな技術を用いて、生体眼で広範囲の強膜の線維構造を可視化することに成功したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科眼科学分野の大野京子教授と五十嵐多恵助教の研究グループと、株式会社トーメーコーポレーションとの共同研究によるもの。研究成果は、「JAMA Ophthalmology」オンライン版に掲載されている。
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強膜は眼球の最外層にあるコラーゲン線維から成る組織で、眼球内の網膜や視神経などの神経組織を保護する重要な役割を有している。そのため、強膜の形状に異常が生じると、失明につながる種々の合併症を引き起こすが、これまで強膜については生体眼では厚さの測定しかされておらず、線維走行などの詳細を眼球広範囲で行うことは不可能だった。
新技術により強膜は線維構造が異なる「内層」と「外層」に区別されると判明
研究グループは今回、「polarization-sensitive OCT」という新技術を用いて、生体眼における強膜の線維構造を眼底の広範囲において可視化することに成功した。
その結果、強膜は、線維構造が異なる内層と外層に区別され、内層は視神経周囲から周辺に向けて放射状に走行していること、一方、外層は内層の線維と直行するように垂直方向に走行することが明らかになった。
強膜の形状異常を来す疾患でも、どちらかの層の線維異常が優位に関与
また、強膜の形状が異常になる代表疾患であるドーム状黄斑では、内層の線維のみが黄斑部に凝集して肥厚していたものの、外層線維はむしろ圧排され菲薄化していた。
正常の状態においても、強膜の内層と外層は全く異なる線維走行を有し、強膜の形状異常を来す疾患においても、どちらかの層の線維の異常が優位に関与することが示された。
強膜の形状異常の病因解明や新規治療確立につながる可能性
これまで厚さというパラメータしかなかった強膜に対し、生体眼において、眼底広範囲の強膜の層別の線維構造や役割の違いを可視化することにより、神経組織の損傷を起こすような強膜の形状異常の種々の病態の病因解明や新規治療の確立につながると期待される、と研究グループは述べている。
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