喘息治療薬ゾレア、食物アレルギーにも有効性を示す
気管支喘息治療薬のゾレア(一般名オマリズマブ)が食物アレルギーにも有効であることを示したランダム化比較試験の結果が報告された。試験では、同薬が患者の重篤なアレルギー反応を大幅に低下させることが明らかになった。米スタンフォード大学ショーン・N・パーカー・アレルギー・喘息研究センターのSharon Chinthrajah氏らが実施したこの試験の詳細は、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次総会(AAAAI 2024、2月23〜26日、米ワシントン)で発表されるとともに、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に2月25日掲載された。
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Chinthrajah氏は、「われわれは、複数の食物にアレルギー反応を示す患者に対する有望な新しい治療法を手に入れたことに興奮している。この新しいアプローチは、アレルギーの引き金となる多くの食物に対して有効なことをはっきりと示した」と話している。
臨床試験では、ピーナツとそれ以外の2種類以上の食物(カシューナッツ、牛乳、卵、クルミ、小麦粉、ヘーゼルナッツ)にアレルギーを持つ1〜55歳の180人を、2〜4週間おきに16〜20週間にわたって、オマリズマブを投与する群とプラセボを投与する群に2対1の割合でランダムに割り付けた。これらの対象者は試験に参加するにあたり、100mg以下のピーナツタンパク質と、その他の2種類の食品タンパク質300mg以下にアレルギー反応を示すことが確認されていた。解析は、1〜17歳の177人(年齢中央値7.0歳、オマリズマブ群118人、プラセボ群59人)を対象に行われた。
その結果、主要評価項目としたピーナツタンパク質600mg以上を、アレルギー反応を起こすことなく一度に摂取できた人は、オマリズマブ群で79人(67%)であったのに対し、プラセボ群では4人(7%)であることが明らかになった。また、副次評価項目とした、カシューナッツ、牛乳、または卵タンパク質1,000mg以上を、アレルギー反応を起こすことなく一度に摂取できた人の割合も、オマリズマブ群の方が有意に高かった(カシューナッツ:41%対3%、牛乳:66%対10%、卵68%対0%)。
米食品医薬品局(FDA)は2月16日、この研究の中間解析に基づき、ゾレアの食物アレルギーへの適応拡大を承認した。論文の筆頭著者である米ジョンズ・ホプキンス大学医学部のRobert Wood氏は、「食物アレルギー患者は、アレルゲンへの偶発的な曝露により命を脅かす反応が生じる脅威に日常的にさらされている。この研究により、オマリズマブが少量のアレルゲンへの偶発的な曝露から身を守る手段となり得ることが明らかにされた」と述べている。
ただし、ゾレアは決して安価な薬剤ではない。ゾレアを製造販売するGenentech社によると、ゾレアの定価は小児で毎月約2,900ドル(1ドル150円換算で43万5,000円)、成人で毎月約5,000ドル(同75万円)である。同社の広報担当であるLindsey Mathias氏はかつてCNNの取材に対し、「患者が実際に支払う費用は、保険適用やその他の経済的支援制度により、たいていの場合はこれよりは低い」と語っている。
研究グループは、ゾレアが食物アレルギーを持つ人にどのように役立つかの理解を深めるためには、さらなる研究が必要だと指摘する。Chinthrajah氏は、「ゾレアの服用が必要な期間はどの程度か、ゾレアは免疫系を恒久的に変化させるのか、この薬に最も強い反応を示す患者の特徴は何なのかなど、まだ解明されていない疑問がたくさんある」と話している。
▼外部リンク
・Omalizumab for the Treatment of Multiple Food Allergies
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