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骨疾患の原因となる「破骨細胞分化」を制御するメカニズムの一端を解明-東京理科大

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2024年02月09日 AM09:30

RANKLによる破骨細胞分化に欠かせないCpeb4の働きを明らかに

東京理科大学は2月5日、RNA結合タンパク質の1種である「細胞質ポリアデニル化エレメント結合タンパク質4()」が、mRNAのスプライシング制御を介して、破骨細胞の分化に重要な役割を果たしていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大薬学部生命創薬科学科の早田匡芳教授と同大薬学研究科薬科学専攻の荒崎恭弘氏(2023年度博士後期課程3年)の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Cellular Physiology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

骨粗しょう症とは、閉経や加齢により骨代謝のバランスが崩れ、骨が脆くなった状態。高齢化が進む日本では骨粗しょう症患者は増加傾向にあり、現在1300万人以上が罹患していると推定されている。骨粗しょう症の高齢者が転倒して骨折して寝たきりになるケースも多く社会問題となっているが、既存の治療法では十分な効果が得られない患者も多いことから、新たな治療薬の開発が待たれている。

破骨細胞は古くなった骨を吸収する細胞で、新しい骨を形成する骨芽細胞とともに骨の新陳代謝を担っている。破骨細胞の過剰な活性化は、骨粗しょう症や関節リウマチなどの骨疾患における骨減少や骨破壊の原因となることから、これら骨疾患の治療標的となっている。

破骨細胞は骨髄造血幹細胞由来の単球・マクロファージ系前駆細胞から分化して形成されるが、前駆細胞から破骨細胞への分化が亢進すると骨代謝のバランスが崩れ、骨破壊が誘導されるため、破骨細胞分化の詳細なメカニズムの解明が課題となっている。これまで、破骨細胞の分化に関わるシグナル伝達経路や転写調節因子の働きについては数多く報告され、知見の蓄積が進んでいる。一方、mRNAスプライシングなどのmRNA代謝と破骨細胞分化の関係はまだよくわかっていない。しかし近年、破骨細胞の分化と機能の制御には、mRNAのスプライシングや安定性制御、翻訳制御といった転写後の制御が不可欠であることが明らかになりつつある。

これまでに研究グループは、RANKLによる破骨細胞分化においては、mRNAの転写後調整を行うCpeb4の存在が必須であり、核内構造体に局在することを発見・報告していた。しかし、Cpeb4の局在を引き起こすメカニズムや、核内構造体でCpeb4が果たす役割については不明だった。

Cpeb4、シグナル伝達を介さず細胞質と核の間を往復

研究グループはまず、RANKL処理を施したマウスマクロファージ様細胞株RAW264.7において、RANKL処理によってCpeb4のリン酸化レベルが上昇しているか否かを、ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)で調べた。その結果、Cpeb4はRANKL処理前にすでに高度にリン酸化されており、RANKL処理9時間後も変化はなかったことから、Cpeb4の局在変化はリン酸化レベルの変化とは無関係であることが示唆された。

また、ヒト胎児腎臓由来細胞株HEK293TにトランスフェクションしたCpeb4は、RANKL処理したRAW264.7細胞と同様に核内構造体に局在したことから、HEK293T細胞においては、Cpeb4の局在にはRANKLシグナルは必要ではないということが示唆された。さらに、Cpeb4を発現しているHEK293T細胞で、タンパク質の核外輸送を阻害すると、Cpeb4は核全体に集積した。この結果は、Cpeb4はシグナル伝達を介さずに細胞質と核の間を往復していることを示唆している。

Cpeb4はスプライシング因子SRSF5/6と共局在し、相互作用

次に、核内構造体への局在に必要なCpeb4の領域を同定した。RNA結合タンパク質は通常、特定の構造を持たない不安定なアミノ酸配列である天然変性タンパク質(IDR)と、RNAを認識する領域を持っている。転写や選択的スプライシングなどのRNA代謝全般に関わるFused in sarcoma(FUS)のようなRNA結合タンパク質は、液—液相分離を媒介するIDRを持ち、細胞質液滴を形成することが知られている。

Cpeb4のタンパク質構造を予測したところ、Cped4もIDRを持つものの、これらのIDR領域を欠損させたCpeb4は、野生型Cpeb4と同様の核内局在を示した。しかし、RNA結合領域を欠損させたCpeb4は、核内構造体には局在しなかった。

このことから、核内構造体へのCpeb4の局在は、Cpeb4のIDRを介したタンパク質間相互作用によるものではなく、Cpeb4とRNAとの相互作用によるものであると推測された。さらに、免疫蛍光染色と免疫沈降実験の結果、Cpeb4はスプライシング因子であるSRSF5とSRSF6と共局在し、相互作用していることが示唆された。

Cpeb4が核内の「液-液相分離」を介し、スプライシングを制御

最後に、破骨細胞分化の過程でCpeb4が破骨細胞分化関連遺伝子のスプライシングを制御しているか否かを調べるため、RNA-seq解析を行った。その結果、Cpeb4欠損によって破骨細胞分化に関わる転写調節因子であるId2のスプライシングのパターンが変化することが確認できたという。以上の結果は、Cpeb4が核内での液-液相分離を介して、スプライシングを制御している可能性を示唆している。

骨疾患の病態解明や治療薬開発の基盤となる重要な知見

破骨細胞は、骨粗しょう症などの骨疾患の治療標的として研究が進められている。今回の研究ではマウスの培養細胞が用いられたが、ヒトにおいてもCPEB4遺伝子多型と骨密度が相関しているという研究報告がある。そのため、同成果は骨粗しょう症や関節リウマチの病態解明や、新たな治療薬開発の基盤となる重要な知見と考えられる。

「破骨細胞が分化する過程は非常にダイナミックで、その背後に潜むメカニズムが気になっていたが、今回その一端を解明することができた。今後も骨疾患の病態解明や治療薬の開発に貢献していきたい」と、研究グループは述べている。

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