血中ALP、血液透析患者の予後への関連をPTHの作用と比較した報告はなかった
新潟大学は1月26日、血液透析患者の国際共同研究 the Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study(DOPPS)に参加して2005年から2021年の日本を含む9か国2万8,888人の血液透析患者を調査し、その結果、血液透析患者の生命予後、心血管疾患、そして骨折にアルカリフォスファターゼ(ALP)が強く関連していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医歯学総合病院血液浄化療法部の山本卓病院教授、東海大学医学部腎内分泌代謝内科学の深川雅史教授、駒場大峰准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Kidney International Reports」に掲載されている。
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慢性腎臓病が進行すると血液透析をはじめとする腎代替療法が必要となる。血液透析患者は、さまざまな合併症のため生命予後が悪いことが知られている。二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)は血液透析患者に高頻度に発症する合併症の一つである。SHPTでは、副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌され、骨をはじめとする全身の臓器に作用する。その結果、血液透析患者の死亡、心血管疾患、そして骨折のリスクが増加する。例えば過剰に分泌されたPTHが骨に作用すると骨代謝が亢進して、骨折が起こりやすくなる。しかし血中PTH濃度と骨折に関しては関連が大きいという報告と、小さいという報告があり、見解が一致していなかった。ALPは、PTHが骨に作用した結果、骨から分泌される酵素で骨代謝の結果を表すと考えられる。これまでもALPが血液透析患者の予後に関連したという報告はいくつかあったが、PTHの作用と比較した報告はなかった。
ALP・PTH血中濃度は他国より低値、ALPは総死亡/心血管疾患死亡/骨折と関連
今回の研究ではDOPPSのデータを使用し、2005年から2021年の日本を含む9か国2万8,888人の血液透析患者の血中ALP値、PTH値、総死亡、心血管疾患による死亡、および骨折との関連を解析した。その結果、日本のALPとPTHの血中濃度は他国と比較して低値だった。ALP高値は低カルシウム血症、低リン血症、カルシミメティクス使用と関連した。ALPは、総死亡、心血管疾患による死亡、および骨折と明らかな関連を示し、それはPTHとの関連と比較して強く現れた。
大規模国際共同研究のデータ解析から、血液透析患者ではALPはPTHより、死亡、心血管疾患、そして骨折と強く関連することが示された。この結果は、SHPTの病態を考える際に、PTHだけでなく骨代謝を評価し、ALPをはじめとする骨代謝マーカーを適切に管理することが、血液透析患者に有益である可能性を示した。
ALPの適切な管理による予後改善、検証するための介入研究が望まれる
「今回の報告は、血液透析患者のALPの特徴と予後の関連を調査した観察研究であるためSHPTの治療により、PTHだけでなくALPを適切に管理することで血液透析患者の予後が改善するかを検証する介入研究の実現が望まれる」と、研究グループは述べている。
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