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遅発性アルツハイマー病、発症リスク高める日本人HLAハプロタイプ同定-長寿研ほか

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2024年01月24日 AM09:20

LOAD発症に関わるHLAの遺伝子多型、日本人では未報告

国立長寿医療研究センターは1月22日、Apolipoprotein E遺伝子のe4アレル(APOEe4)を持たない日本人では、ヒト白血球抗原(HLA)のハプロタイプDRB1*09:01-DQB1*03:03が遅発性アルツハイマー病(Late-onset Alzheimer’s disease:)の発症リスクを高めることを発見したと発表した。この研究は、同センター研究所メディカルゲノムセンターバイオインフォマティクス研究部の重水大智研究部長、菅沼睦美研究員、木村哲晃研究員、オミクスデータ統合解析室の山川明子研究員、尾崎浩一センター長(疾患ゲノム研究部長)、認知症先進医療開発センターの櫻井孝研究所長(センター長)、予防科学研究部の藤田康介研究員、研究推進基盤センターの新飯田俊平センター長、渡邉研バイオバンク長、理化学研究所生命医科学研究センターファーマコゲノミクス研究チームの莚田泰誠チームリーダー、福永航也研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「npj Aging」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

LOADは高齢者で最も多く見られる認知症で、神経炎症などの環境因子や人種横断的な発症リスクであるAPOEe4などの遺伝因子が複雑に関わって発症すると考えられている。神経炎症には免疫反応が深く関わっており、HLAがその重要な役割の一端を担っている。近年、欧米の研究グループからHLAの遺伝子多型とLOAD発症の関連が報告されたが、その多型には人種特異性が認められる。一方で、日本人におけるLOAD発症に関わるHLAの遺伝子多型についてはいまだ報告がない。

APOEe4を持たないLOAD患者で有意に高いHLAハプロタイプを同定

研究グループは、国立長寿医療研究センターバイオバンクに登録されているLOAD患者303人と認知機能正常高齢者1,717人の全ゲノム配列データを用いて、LOADと関連するHLA遺伝子多型を網羅的に調べた。

その結果、APOEe4を持たない集団では、HLA-DRB1*09:01とHLA-DQB1*03:03のアレル頻度がLOAD患者に有意に高くなっていることが示された。

同定されたHLAハプロタイプは東アジア人特異的

また、このHLA-DRB1*09:01とHLA-DQB1*03:03のアレル頻度は、欧米人ではあまり見られない、日本人を含む東アジア人に特異的に認められるアレルであることがわかった。

一方で、HLA-DRB1*09:01とHLA-DQB1*03:03は連鎖不平衡が強いため(r2=0.88)、HLA-DRB1*09:01-DQB1*03:03のハプロタイプがLOADの発症に強く寄与している可能性が示唆される。そこでその関連を調べてみると、統計学的有意にハプロタイプがAPOEe4を持たない集団でLOAD発症のリスクを高めていることが示された(オッズ比1.81倍)。

T細胞受容体α鎖の多様性低下もLOAD発症に関与と判明

今回の研究で同定されたHLAハプロタイプのHLA-DRB1とHLA-DQB1は、HLAクラスIIに属する。HLAクラスII分子は、細胞表面に抗原を提示し、その抗原をT細胞がT細胞受容体(TCR)によって認識することで、CD4+ヘルパーT細胞への分化を促進させる。そこで、同定されたハプロタイプとTCRの多様性に関連があるかを調べた。その結果、今回同定されたHLAハプロタイプとの関連はなかったが、TCRのα鎖の多様性の低下がLOAD発症に関与していることが新たにわかった。

日本人LOADの病態理解や発症メカニズム解明につながることが期待

APOEe4は強いLOADのリスク遺伝要因であるが、LOAD集団の大半はAPOEe4を持っていない。この研究では、APOEe4を持たない日本人においては、特定のHLAハプロタイプを有することがLOADの発症リスクが有意に高くなる要因になっていることを意味する。今後データの蓄積が進むことで、さらに日本人特異的なHLAハプロタイプが明らかになることも期待される。「これらの結果は、日本人におけるLOADの病態に関する理解を深めるとともに、発症メカニズム解明の一助になることが期待される」と、研究グループは述べている。

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