不規則な入眠覚醒サイクルは認知症リスクを上昇させる?
入眠と覚醒のサイクルがひどく不規則な人では、より規則的な人に比べて認知症の発症リスクが高い可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。モナシュ大学(オーストラリア)のMatthew Pase氏らによるこの研究結果は、「Neurology」12月23日号に発表された。
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Pase氏は、「健康的な睡眠に関する推奨では、1日7~9時間の睡眠時間を確保することばかりに重点が置かれ、規則正しい睡眠スケジュールを維持することはあまり重視されていない」と指摘。「われわれの研究結果は、認知症リスクを回避するために規則正しい睡眠が重要な要素となることを示唆するものだ」と同大学のニュースリリースで述べている。
この研究では、UKバイオバンク参加者8万8,094人(平均年齢62歳、女性56%)を対象に、睡眠の規則性(毎日の入眠覚醒サイクルの一貫性)と認知症発症との関連が検討された。Pase氏らは、参加者が手首に装着するタイプのデバイスで7日にわたって測定した睡眠サイクルの測定値から睡眠規則性指数(sleep regularity index;SRI)を算出した。SRIは毎日の入眠覚醒サイクルの一貫性を示すもので、100であれば毎日の入眠と覚醒が同じ時間であることを、逆に0であれば入眠と覚醒の時間が常に異なることを意味する。睡眠の規則性が最も乱れている人(SRIスコアの5パーセンタイルに位置する人)の平均スコアは41点、最も規則正しい人(SRIスコアの95パーセンタイルに位置する人)の平均スコアは71点、スコアの中央値は60点であった。
中央値7.2年におよぶ追跡期間中に480人が認知症を発症した。解析の結果、SRIが5パーセンタイルの人では、SRIが中央値の人に比べて認知症発症のハザード比が1.53(95%信頼区間1.24〜1.89)であり、認知症リスクの増加が認められた。一方、SRIが95パーセンタイルの人でもハザード比が1.16(同0.89〜1.50)であり、認知症リスクは低下していなかった。
こうした結果を受けて研究グループは、「この結果は、規則正しい入眠覚醒サイクルの便益を得るために、機械のような規則正しさは必要ではないことを意味するものだ」との見方を示している。ただし、この研究では、不規則な睡眠スケジュールと認知症のリスク増大との関連が示されたに過ぎない点に注意が必要だ。
Pase氏は、「不規則な入眠覚醒サイクルは、効果的な睡眠健康の教育に行動療法を組み合わせることで改善できる。今回の知見に基づけば、睡眠スケジュールが乱れている人は、睡眠の規則性を、非常に高いレベルではなく平均的なレベルにまで改善することで、認知症予防の効果を得られる可能性がある。この結果を今後の研究で確認する必要がある」と話している。
▼外部リンク
・Association of the Sleep Regularity Index With Incident Dementia and Brain Volume
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