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自傷と希死念慮のリスクが高い「思春期児童」の特徴が判明、深層学習で-東大ほか

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2023年12月18日 AM09:30

思春期児童の精神症状の多様な変化パターンを深層学習でグループ分け

東京大学は12月14日、助けを求められず自殺リスクの高い思春期児童の一群を深層学習技術で同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科脳神経医学専攻臨床神経精神医学講座の長岡大樹大学院生(医学博士課程)、安藤俊太郎准教授、笠井清登教授(同大国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)主任研究者)、同大大学院教育学研究科教育心理学講座の宇佐美慧准教授、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Lancet Regional Health – Western Pacific」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

思春期は精神症状や行動上の問題が現れやすい時期だが、その経過は多様で複雑だ。一つひとつの症状が一過性・再発・慢性など多様な経過をたどる上に、それらの症状の併存パターンもまたさまざまであるため、既存の診断基準に当てはまらない場合もよくある。また、精神症状の多様性を捉えようとする枠組みや研究もいくつか提唱されてきたが、思春期という変化の大きい時期における症状の現れ方、併存のパターン、時間経過に伴う変化の多様性を同時に捉えることはできていなかった。

そこで研究グループは今回、重要な情報を効率良く抽出して多くの症状を同時に扱い、どのような形の軌跡も柔軟に表現できる深層学習の技術を用いて、思春期児童の精神症状と行動の問題の軌跡をグループ分けすることを試みた。

思春期児童2,344人の軌跡のパターンを5つのグループに分類することに成功

対象としたのは、思春期の発達について幅広く追跡している「東京ティーンコホート研究」に10~16歳まで全4回の調査に参加した2,344人の一般の思春期児童。対象者の種々の精神症状と行動の問題を、児童本人と養育者がアンケート調査に回答する形で評価した。

深層学習技術で軌跡のパターンを分類して見出した5つのグループは、問題が最小限の「非影響群」(60.5%)、持続的または悪化する抑うつ・不安等の問題を示す「内在化群」(16.2%)、児童の主観的な問題が養育者に見過ごされた「乖離群」(9.9%)、持続的な行動の問題等を示す「外在化群」(9.6%)、さまざまな症状の領域で慢性的な重度の問題を呈する「重度群」(3.9%)だった。

自傷行為・希死念慮のリスクが最も高い「乖離群」は周囲に助けを求めない傾向

さらに、自傷行為と希死念慮のリスクが最も高かった「乖離群」は、周囲に助けを求めようとしない特徴があることが明らかになった。

思春期児童の主観的な体験に耳を傾けることと、それが不可能な児童のフォローが重要

今回の研究成果により、必ずしも精神症状で医療機関にかかっているわけではない一般の思春期児童でも、約40%がいずれかの「問題を抱えるグループ」に分類され、中でも主観的苦痛が養育者に見過ごされていた「乖離群」は、自傷行為と希死念慮が最も多く見られることが判明した。

「本知見は、思春期児童の主観的な体験に耳を傾ける重要性と、周囲に助けを求められない苦痛を抱える児童の存在に光を当てることで、社会として思春期児童を支援する枠組みを構築するための土台となることが期待される」と、研究グループは述べている。

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