サルコペニアが起こる原因は不明点が多く、治療薬も存在しない
群馬大学は11月24日、培養した筋肉細胞やマウスを用いた実験により、チロシンキナーゼの一つであるFynというタンパク質(以下、Fyn)が筋肉の量を調整しているメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の内分泌代謝内科学分野と整形外科学分野の共同研究によるもの。研究成果は、「iScience」に掲載されている。
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加齢に伴い筋肉量や筋力が低下する状態はサルコペニア(加齢性筋減少症)と呼ばれている。また、加齢だけではなく活動性低下や寝たきりなどによって筋肉を使う頻度が減ったせいで筋肉量が減る場合もあり、二次性サルコペニアと呼ばれている。いずれにおいても、どのような仕組みで筋肉が減るのかという原因は不明な点が多く、治療薬も存在しない。
細胞の質を良好に維持する仕組みには「オートファジー」という細胞内の自己浄化機能が重要と言われている。細胞内に不要な物質が溜まらないように分解して排除する仕組みがオートファジーだが、この機能が低下することにより細胞死(アポトーシス)が起こりやすくなることなどが知られている。
Fynがオートファジー活性を低下させて筋肉を減少させることをモデルマウスで確認
研究グループの先行研究により、Fynがオートファジー活性調節を介して、筋萎縮に関与するらしいことがわかっていた。しかし、そのメカニズムには不明な点が多く、Fynがどのような機序でサルコペニアを惹起するかは不明だった。
そこで今回、メカニズム解明のために、筋肉の培養細胞を用いた解析を行った。さらにFynノックアウトマウスを用いて一次性・二次性サルコペニアモデルを作成し、Fynがサルコペニアを惹起する因子であるか否か検討した。その結果、Fynがオートファジー活性を低下させて筋肉を減少させることが明らかになった。
Fynが持つ働きの阻害がサルコペニアの治療法開発につながる可能性
今回の研究により、Fynが筋肉を減少させるスイッチを入れる働きを持つことが判明した。「スイッチを入れる働きを阻害することでサルコペニアを防ぐ薬の開発につながる可能性があり、治療法につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
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