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特発性炎症性筋疾患、PD-1+CD8+細胞が疲弊せず筋傷害に関与と判明-東京医歯大

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2023年11月10日 PM12:03

+T細胞の持続的な活性化、一部で筋炎を発症する

東京医科歯科大学は11月8日、(IIM)において、PD-1+CD8+T細胞は機能的に活性化し、筋傷害に関与するサブセットであり、それに対して筋線維はPD-L1を使って対抗していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学分野の保田晋助教授、佐々木広和助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Autoimmunity」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

特発性炎症性筋疾患は原因不明の自己免疫疾患で、骨格筋が主に傷害される。自分自身に対する異常な免疫反応を抑えるため、副腎皮質ステロイドを中心とした免疫抑制薬が用いられるが、さまざまな細胞に作用するため、多彩な副作用が知られている。また、現在使用可能な治療法で良くならない患者も存在する。IIMの病態に関与する細胞を見つけることで、より効果的な治療の開発が期待できる。

PD-1は主に活性化したT細胞の細胞表面上に発現する。PD-1を発現したT細胞(PD-1+)はPD-1のリガンドであるPD-L1と結合すると、T細胞内に活性化を抑制する信号が伝わり、攻撃する機能を失っていく。PD-1とPD-L1が結合しないようにして、PD-1+T細胞を持続的に活性化させる免疫チェックポイント阻害療法はがんの治療で有効だが、治療例の一部で筋炎を発症することがある。また、IIM患者の筋組織ではPD-1+細胞の浸潤と筋線維のPD-L1発現が見られる。こうした現象は、あたかもPD-1+細胞が筋肉を攻撃し、筋線維がPD-L1という武器で対抗しているように見える。

一方で、がんの微小環境や慢性ウイルス感染といった慢性的に抗原(敵)が存在し、T細胞が刺激されている状況では、PD-1+CD8+T細胞は疲弊し、攻撃する力を失ってしまう。IIMでは、T細胞が自己の筋を誤って敵と認識して攻撃していると考えられる。この場合、自己の抗原(筋)により慢性的に刺激されている状況であると考えられ、PD-1+CD8+T細胞は疲弊し、攻撃する機能を喪失していてもおかしくない。つまり、IIMにおいて、PD-1+CD8+細胞が筋傷害に寄与するサブセットなのか、あるいは疲弊しているのかは不明と言える。

IIM患者の活動期、大部分のPD-1+CD8+T細胞は疲弊せず細胞溶解分子を高発現

がんの微小環境や慢性ウイルス感染といった慢性的な抗原刺激下で、CD8+T細胞が疲弊する過程において、TOXという分子が重要な役割を担っている。PD-1+CD8+T細胞がTOXを高発現すると、細胞溶解分子(パーフォリンやグランザイムBなど)の発現が低下し、攻撃能が低下することが報告されている。IIM患者の末梢血でPD-1、、細胞溶解分子の発現を解析したところ、活動期には非活動期と比較して、PD-1+CD8+T細胞はパーフォリンやグランザイムBといった細胞溶解分子を高発現していることがわかった。一方でPD-1を発現していないCD8+T細胞では細胞溶解分子の発現率は活動期と非活動期の間に差を認めなかった。また、活動期のPD-1+CD8+T細胞のごく一部でのみTOXを高発現し、細胞溶解分子の発現率が低下していたが、大部分のPD-1+CD8+T細胞は活性化した状態を維持していた。これらの結果から、がんの微小環境や慢性ウイルス感染と異なり、IIMにおけるPD-1+CD8+T細胞は慢性的な自己抗原による刺激下でも、疲弊することなく、活性化していると言える。

筋炎モデル・PD-L1KOマウスの解析から、PD-1+CD8+T細胞が筋傷害に関与と判明

また、マウスの筋炎モデルを用いて、PD-1+CD8+T細胞の病原性も検証した。マウス筋炎では、PD-1を発現していないCD8+T細胞と比較してPD-1+CD8+T細胞が細胞溶解分子を高発現していた。特に傷害された筋組織において、細胞溶解分子を発現するPD-1+CD8+T細胞の集積が顕著だった。PD-1+T細胞の活性化を抑制するブレーキであるPD-L1を欠損させたPD-L1ノックアウトマウス(PD-L1KO)では、筋力低下が顕著に見られ、筋炎の重症化が見られた。PD-L1ノックアウトマウスの筋組織では、通常の野生型マウスと比較して、細胞溶解分子を高発現するPD-1+CD8+T細胞の増加が見られた。これらの結果から、筋炎において、PD-1+CD8+T細胞は筋傷害に関与する病的なサブセットであることがわかった。

IIMの筋線維はPD-L1を発現し攻撃に対抗

一方、攻撃される筋側に目を向けてみると、IIMの筋線維はPD-1+CD8+T細胞の攻撃に対抗すべくPD-L1を発現しているように見える。CD8+T細胞は細胞溶解分子以外にもさまざまな攻撃分子を持っていて、そのうちのIFNγはがんやウイルス除去に重要な因子として知られている。筋線維におけるPD-L1の制御メカニズムは十分にわかっていなかったが、筋炎においてCD8+T細胞などから産生されるIFNγがCDK5という分子を介して、筋線維のPD-L1発現を制御していることを明らかにした。また、IFNγによってPD-L1が高発現した筋線維はCD8+T細胞の攻撃を減弱させることもわかった。つまり、IIMにおいて、筋線維は危険信号としてIFNγに反応し、PD-L1発現を介してPD-1+CD8+T細胞に反撃していると言える。

T細胞が疲弊回避するメカニズムの存在を示唆、自己免疫疾患の理解に重要な知見

IIMにおけるPD-1+T細胞を標的にした新規治療法の可能性に関する新たな知見となる。これまでIIMを含む自己免疫疾患におけるT細胞の疲弊メカニズムは十分にわかっていなかった。この研究により、IIM患者ではPD-1+CD8+T細胞は疲弊せず、むしろ病態形成に関与していることがわかった。このことは、IIMにおいてT細胞が疲弊を回避するメカニズムが存在することを示唆している。「IIMのみならず、慢性的に自己の抗原により免疫細胞が刺激されていると考えられる多くの自己免疫疾患の病態の理解に重要な知見となると考えられる」と、研究グループは述べている。

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