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認知症アミロイドPET検査、血しょうバイオマーカーAβ42/40比で高精度予測-慶大

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2023年11月10日 AM11:35

従来検査、コストの高さや広範囲の臨床利用にハードル

慶應義塾大学は11月9日、血しょうバイオマーカーであるアミロイドβ()42/40比がアミロイドPET検査による脳内アミロイドβ沈着を高精度に予測できることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の文鐘玉特任准教授、同生理学教室伊東大介特任教授らを中心とした慶應義塾大学病院メモリーセンターメンバーらの研究グループによるもの。研究成果は、「Alzheimer’s Research & Therapy」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本における認知症罹患者は、2025年には675万人になると推計されている。そのうち多くをアルツハイマー型認知症が占め、その数は466万人と予測される。加えて、より若年から発症する若年性のアルツハイマー型認知症も、働き盛りの人とその家族に大きな影響を与えることから、大きな問題となっている。アルツハイマー病は、脳内のAβとそれに続くタウタンパク質の異常な蓄積により引き起こされ、その結果、脳内の神経変性が起こり認知機能障害に至る。アルツハイマー型認知症は、アルツハイマー病により認知症に至った状態を指す。

近年、初期のアルツハイマー型認知症と軽度認知障害に対する疾患修飾薬が国内で承認されたこともあり、アルツハイマー病を正確に診断する必要性が以前より増している。アルツハイマー型認知症の臨床診断は、健忘(物忘れ)などを含む認知機能障害や精神的な症状、頭部MRI検査、脳血流検査などでなされる。しかし、その精度は必ずしも高いものではない。一方で、アミロイドPET検査や脳脊髄液検査を行うことで、客観的に脳内のAβの有無を判定できるが、前者は高額で設備の整った施設を必要としたり、後者は比較的侵襲が高かったりするため、広く適用されるには至っていない。近年、血しょう中のバイオマーカーを測定することでこの脳内Aβの沈着を判定する方法が複数開発され、注目されている。しかし、それらの方法の多くは検査コストが高いか、研究室レベルでの利用に留まり、広範囲の臨床利用にはハードルがあった。

Aβ42/40比で認知症アミロイドPET検査の陽性判定を予測できるか検証

今回、研究グループは、アルツハイマー型を含むさまざまな認知症の人と健常ボランティアを対象に、全自動免疫測定装置HISCLシリーズ「全自動免疫測定装置HISCL(TM)5000/HISCL(TM)-800(以下、HISCLシリーズ)」(シスメックス株式会社)を用いて、血しょうAβ1-42とAβ1-40を測定。その比(Aβ42/40比)がアミロイドPET検査([18F]florbetaben PET)の陽性判定を予測できるか調べた。

AUC0.950の高精度で陽性を予測、MCIや健常者のみでも高精度

その結果、血しょうAβ42/40比は、指標AUC(area under the curve)で0.950と高い精度でアミロイドPETによる陽性を予測した(AUCは、1に近いほど精度が高い)。加えて、)と健常の人のみ、あるいは健常の人のみを対象とした場合でも、同様に高精度で予測した(それぞれAUC=0.934, 0.993)。これらの予測精度は、他の有望な血しょうバイオマーカーであるリン酸化タウ181(p-tau181)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロフィラメント軽鎖タンパク質(NfL)を有意に上回っていた。

初期アミロイド蓄積示唆の「グレーゾーン」センチロイド値も高精度予測

加えて、血しょうAβ42/40比は、アミロイドPETによる脳内のアミロイド蓄積を数値化したセンチロイド値と高度に相関(相関係数-0.767)していた。特に、初期のアミロイド蓄積を示唆するとされる「グレーゾーン」のセンチロイド値(13.5-35.7)について、アミロイドPETのゴールドスタンダードである視覚判定よりも高精度に予測した。

さらに、例数は少ないものの、血しょうAβ42/40比は脳脊髄液中のAβ42/40比と高度に相関(相関係数0.727)していた。これは、従来報告されていた、他の方法で測定した血しょうAβ42/40比を上回るものだった。以上の結果より、HISCLシリーズを用いて測定した血しょうAβ42/40比は信頼性が高く、かつ初期の脳内アミロイド蓄積を検出できる可能性が示された。

少ない侵襲で、幅広い患者への適用が可能

疾患修飾薬の認可もあり、アルツハイマー病に対する早期発見、早期介入の重要性が認識されている。今回の研究により、アルツハイマー病のスクリーニングとしてHISCLシリーズを用いた血しょうAβ42/40比が有望である可能性が示された。特に、HISCLシリーズはすでに国内で広く利用できるため、少ない侵襲で、幅広い患者への適用が可能だ、と研究グループは述べている。

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