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体液貯留型の心不全や肝不全、腎うっ血解除で腎障害予防の可能性-東北医薬大ほか

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2023年11月01日 AM10:25

腎静脈圧上昇に伴う腎うっ血の腎障害への関与、ラットとヒト腎臓でも見られるか?

東北医科薬科大学は10月30日、動物実験とヒト検体の腎臓を用いた検討を行い、静脈圧の上昇により腎臓がうっ血することで、腎直血管の周皮細胞()がはく離することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部内科学第三(腎臓内分泌内科)教室の森建文教授と、東北大学大学院医学研究科の廣瀬卓男助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Hypertension Research」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

心不全や肝不全などの体液貯留型の病態では腎障害がしばしばみられ、治療に難渋する。この腎障害が生じる病態メカニズムとして、体液貯留から中心静脈圧が上昇し(静脈高血圧)、それに伴う腎静脈圧の上昇が腎うっ血を引き起こし、・線維化を進行させるという機構が注目されている。しかし、これまで腎静脈圧上昇や腎うっ血に着目し、そのメカニズムを解明する基礎研究は少なく、腎静脈循環の改善により腎保護作用を有することが証明された薬剤は存在しない。

研究グループは、この腎うっ血に着目し、「腎静脈圧上昇に伴う腎うっ血が腎障害に関与する」という仮説のもと、左右腎静脈間の中心静脈を完全結紮して人為的に左腎のみ静脈圧を上昇させ、腎うっ血状態とする新たな動物実験モデルを開発。同モデルを用いて腎うっ血の病態メカニズムの解明や治療・予防法の探索を行い、腎うっ血に伴いペリサイトがはく離すること、血小板由来増殖因子受容体タンパク質(PDGFR)による筋線維芽細胞転換が腎線維化に関与していることなどを明らかにしてきた。

さらに今回、人為的に腎うっ血状態とする動物実験モデルで見出した知見が、既存の体液貯留型の高血圧モデルラットとヒトうっ血性心不全患者の剖検腎においても生じているかについて検討した。

食塩で高血圧のモデルラット、腎うっ血誘導でペリサイトはく離・腎障害・線維化

研究では、体液が貯留する高血圧モデルの高食塩負荷ダール食塩感受性高血圧(DahlS)ラットを用いた。高食塩負荷によりDahlSラットに腎うっ血を生じさせると、ペリサイトはく離と腎障害・線維化が観察された。加えて、腎被膜を除去することで腎うっ血を解除すると、このペリサイトはく離と腎障害・線維化が改善された。

一方、同程度の高血圧を呈しながら体液貯留の少ない高血圧自然発症ラット(SHR)では、このペリサイトはく離は起きていなかったという。

うっ血性心不全に伴う腎うっ血患者剖検腎の超微形態を観察し、ペリサイト剥離をヒトで初確認

また、低真空走査電子顕微鏡(LV-SEM)を用いたヒト剖検腎の超微形態の観察により、うっ血性心不全に伴い腎うっ血を来した患者においてもペリサイトはく離が生じていることが、今回初めて観察された。

これまで腎内血行動態は動脈血流を中心として研究され、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬やカルシウム拮抗薬などの動脈圧を調節する薬剤が開発されてきた。しかし、腎静脈圧上昇に伴う腎障害の詳細なメカニズムは依然として不明であり、腎静脈循環を改善することが証明された薬剤は存在しない。

「今回、ヒト検体で初めてペリサイトの剥離が腎うっ血による腎障害に関与していることを明らかにした。今後、腎うっ血の病態理解やペリサイトを対象とした腎障害の治療・予防法の開発への応用が期待される」と、研究グループは述べている。

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