NAFLD病態初期に成長ホルモン-インスリン様成長因子1軸が活性化しているのかは不明
新潟大学は10月25日、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の病態に脳内ペプチドの動態が関与していることを解明したと発表した。この研究は、同大医学部医学科総合診療学講座/大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の上村顕也特任教授、同分野の永山逸夫氏(大学院生)、寺井崇二教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Hepatology International」に掲載されている。
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NAFLDには生活習慣、遺伝的素因、環境要因を含むさまざまな要因が複雑に関与し、多臓器にも合併症を引き起こす。研究グループは、NAFLDの病態に自律神経を介する「肝-脳-腸連関」が関与し、セロトニンなどの消化管ホルモンが腸内細菌叢、腸管バリア機能や下垂体ホルモンに影響して、NAFLDの進行に関与していることを明らかにしていた。また、NAFLD進行期に、成長ホルモンの分泌を促す胃グレリンが肝臓からインスリン様成長因子1を分泌させて、病態を制御すべく活性化していることも明らかにしていた。
しかし、これまで小児肥満などとも深く関与するNAFLDの病態初期に成長ホルモン-インスリン様成長因子1軸が活性化しているかについては解明されていなかった。そこで今回、同課題解明のため研究を行った。
胃グレリン抑制でも成長ホルモン-インスリン様成長因子1軸の活性化をモデルマウスで確認
研究グループは、NAFLDモデルマウスを対象として、NAFLDの病態初期に、自律神経経路を遮断して胃グレリンの発現を制御し、病態を検討した。さらに、胃グレリンが抑制されている状況で、NAFLDの病態初期に成長ホルモン-インスリン様成長因子1軸の動態を検討した。これらのモデルマウスでは、成長ホルモン-インスリン様成長因子1軸が活性化しており、胃グレリン以外に成長ホルモン分泌を活性化する機構の存在が示唆された。
そこで、脳内ペプチドの解析を行ったところ、脳由来神経栄養因子であるBrain-derived neurotrophic factor(BDNF)と副腎皮質刺激ホルモン放出因子であるCortictropin releasing factor(CRH)の発現が低下し、成長ホルモン分泌は活性化していた。またこれらの変化は、BDNF、CRHの上流因子で、食欲にも関連するメラノコルチン4受容体が欠損したマウスでは認められなかったという。
病態の段階に応じて制御すべき神経経路の解明につながる可能性
今回の研究成果により、NAFLDの初期段階においては、胃グレリンの発現に関与する末梢自立神経経路と脳内ペプチドなどの中枢性神経伝達物質が、NAFLDの病態進行抑制を相補的に司っている可能性が示唆された。
「この効果は脳内で食欲が制御できないマウスでは弱いことから、NAFLDの病態の段階に応じて、制御すべき神経経路(中枢性あるいは末梢性)を解明するための基盤的成果になる可能性がある」と、研究グループは述べている。
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