特徴・予後が長らく不明だった指定難病
順天堂大学は10月23日、心臓限局性サルコイドーシス患者における臨床背景および予後を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部循環器内科講座の前田大智非常勤助教、大学院医学研究科循環器内科学の末永祐哉准教授、堂垂大志非常勤助教、砂山勉非常勤助教、南野徹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Heart Failure」オンライン版に掲載されている。
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指定難病のサルコイドーシスは、未解明な点が多い疾患だ。体内に原因不明の炎症が起こり、その炎症を起こした細胞が肉芽腫を作る病気とされている。肉芽腫は、肺、皮膚、眼などの全身の臓器に生じる可能性があり、心臓に認められると心臓サルコイドーシスと呼ばれる。心臓サルコイドーシスでは、命に関わる危険な心室性不整脈や心不全、突然死を引き起こす可能性があることが知られている。サルコイドーシスが心臓のみに認められる場合、心臓限局性サルコイドーシスと呼ばれる。心臓限局性サルコイドーシスは、以前からその存在は認識されていたものの、長らくその特徴や予後は不明だった。そこで今回の研究は、心臓限局性サルコイドーシスの頻度、患者背景、予後などを網羅的に検討することを目的として実施した。
診断時に左室駆出率「低」、心房細動・心不全既往あり割合「高」の特徴
今回の研究では、2001~2017年の間に、国内33病院において、2016年の日本循環器学会のガイドラインに基づいて心臓サルコイドーシスと診断された475人のデータを統計的に解析。心臓限局性サルコイドーシスの診断は、同ガイドラインに従って行った。
心臓サルコイドーシスと診断された475人のうち、119人(25.1%)が心臓限局性サルコイドーシスと診断された。心臓限局性サルコイドーシス患者は、非心臓限局性サルコイドーシス患者と比べて、診断時に左室駆出率が低く、心房細動や心不全を既往に持つ割合が高値だった。中央値42か月間の追跡の間に、イベント(死亡、心不全による入院、致死性不整脈の複合)は141人(心臓限局性サルコイドーシス:41人(34.5%)、非心臓限局性サルコイドーシス:10人(28.1%))に発生した。
心臓限局性・非心臓限局性サルコイドーシス、予後に統計学的な差なし
単変量モデルにおいて、心臓限局性サルコイドーシスは非心臓限局性サルコイドーシスよりも有意にイベント発生率が高い結果だった。しかし、その他のリスク因子で調節した結果、心臓限局性サルコイドーシスと非心臓限局性サルコイドーシスの予後に統計学的な差がないことが明らかとなった。
以上の結果より、心臓限局性サルコイドーシス患者は非心臓限局性サルコイドーシス患者と比べて、一見予後が悪く見えるが、それは診断時の全身の状態が悪いことを反映している可能性が考えられるとしている。
診断時の心機能や併存疾患の有無が予後を左右する可能性
今回の研究成果により、心臓限局性サルコイドーシスであるか非心臓限局性サルコイドーシスであるかよりも、診断時の心機能や併存疾患の有無が予後を左右する可能性が示唆された。したがって、いかにして心臓サルコイドーシスを早期に発見し、早期に治療介入を行えるかが今後の重要な課題となると考えられる。同研究結果により、心臓サルコイドーシスの早期発見に関する研究が進むことが期待される、と研究グループは述べている。
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・順天堂大学 プレスリリース